習主席、初の訪韓へ “反日共闘”、“北朝鮮問題の試金石”、国内外の報道分かれる

 中国の習近平国家主席が近く訪韓する見込みだ。一部の日本メディアは、「反日」で価値観を共にする中国と韓国の接近により、日米韓の切り崩しが加速すると指摘する。

 一方、中国・韓国のメディアは、アメリカのラッセル国務次官補(東アジア・太平洋担当)が、習主席の訪韓は今後の北朝鮮問題の行方を占う「試金石になる」と語ったことを大きく取り上げている。

【習近平訪韓は今後の北核問題の「試金石」】
 習主席の訪韓の具体的な日程は不明だが、数週間以内に実現することが確実視されている。読売新聞は、外交筋の情報として「7月3、4日に国賓として初訪韓する」と伝えている。朴槿恵(パク・クネ)大統領との首脳会談、韓国国会での演説などが行われる見込みだ。首脳会談では北朝鮮問題が主な議題になりそうだという。

 韓国の聯合ニュースと、中国の『China Daily USA』は、共にワシントンで開かれた米韓同盟フォーラムでのラッセル次官補の発言を取り上げた。それによれば、ラッセル次官補は、習主席の訪韓について「これは大きな試金石だ。北朝鮮問題で必要となる(中韓の)協力関係が強化されるだろう」と評価した。

 一方、朴大統領は先月26日、訪韓中の王毅・中国外相に「習近平国家主席の訪韓時には、北の核問題を進展させる深い協議ができるでしょう」と語ったという(中央日報)。

 また聯合ニュースによれば、中国側は習主席の訪韓に合わせ、韓国にパンダを贈呈する準備を進めているという。

【中国への依存度を強める韓国と日本の関係は?】
 元韓国外相のキム・スンハン氏は、中国と韓国の関係は今、1992年の国交樹立以来最も親密な状態だと『China Daily USA』に語っている。同氏は、今や中国は韓国の最大の貿易相手国であり、その規模は対アメリカと日本を合わせたものよりも大きいと指摘する。そうした経済的な背景も、韓国の中国への接近と“日米離れ”を加速させる要素だと見られているようだ。

 一方、ソウル大学のパク・チョルヒ教授(日本政治)は、日本が反日姿勢を強める中韓を避けてインドや東南アジア諸国との関係を強化していることについて、「もし日本が地域の平和に貢献したいのならば、(中国・韓国という)直近の隣国と良い関係を築かなければならない」と批判した(『China Daily USA』)。

 聯合ニュースによれば、ラッセル次官補は先のフォーラムで、日韓関係について「両国はこれから難題を克服しなければならない。どちらかだけが動くのではだめだ。そして、政治問題化したり、相手の信頼を失うようなことがあれば、(関係改善は)さらに難しくなる」と語った。「政治問題化」は韓国側による全米での「慰安婦像」の建立などを指し、「信頼を失う」行為は、安倍首相の靖国参拝などを指すとみられる。

【韓国が中国依存に踏み切れない事情】
 ウェブ誌『ディプロマット』は、習主席訪韓を受け、中韓関係の「リアルな部分」を分析した記事を掲載した。同誌は習主席の訪韓を報じる両国のメディアは、「今やどんなに両国が重要か、両国がどれだけ世界の政治を動かしているか、アメリカを中心とする西側がどれだけ彼らに注目しなければならないか・・・」といった論調で『自画自賛」と「虚栄心」に溢れた記事で埋め尽くされ、「おなじみの陰謀じみた」日本批判がそれに加わると皮肉を込めて予想する。

 そのうえで、「地元メディアが報じない中韓関係の複雑な問題」として、以下の3点を挙げる。それらにより、韓国はきっぱりと米日と離れて中国側につくわけにはいかない、と同誌は主張する。

 一つ目は、経済的には中国、軍事的にはアメリカに依存しているという「自己矛盾」だ。「これを解決する明確な回答はない」と同誌は記す。北朝鮮問題では、中国の一存で国家の存亡が左右されるほど北朝鮮の対中依存度が高まっている中、「朴大統領は北朝鮮問題では常に中国の顔色を伺う必要に迫られている」と記す。南北統一は中国が北朝鮮を切り捨てない限りは実現せず、さもなくば北朝鮮は中国の属州になるかもしれないとし、「平壌への道は今や北京経由なのだ」と結んでいる。

 また、「韓国は、アメリカと日本ほどは中国の勢力拡大を心配していないかもしれない。しかし、領土問題では妥協しないだろう」と、韓国領海での中国船の違法操業問題などを取り上げている。韓国は、たびたび侵入してくる中国の漁船を拿捕・勾留したり、中国の防空識別圏の設定に対抗して、自国の防空識別圏を拡大するなどしている。これらの中国への対抗策は、日米と歩調を合わせたものではなく韓国の独自路線であるとも、同誌は付け加えている。

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Text by NewSphere 編集部