拉致再調査で日朝関係改善なるか…韓国紙は“韓・米・日同盟に亀裂”と危惧

 北朝鮮は5月26~28日に行われた日朝局長級協議で、拉致被害者ら「特定失踪者」について、包括的に調査すると約束した。菅官房長官は16日の記者会見で「再調査開始は日朝合意から3週間程度ということで、今折衝が行われている」と進展の状況を説明した。

 北朝鮮が予定通り合意事項を履行すれば、週内にも拉致被害者らに関する「特別調査委員会」を設置、日本側に通知するはずである。日本政府は再調査実施の確認ができ次第、北朝鮮への制裁の一部を解除する方針だが、現段階では北朝鮮の「本気度」は不透明な様子である。

【日本政府の動きに対する韓国の反応】
 韓国コリア・ヘラルドは社説で、昨今の日本の対北朝鮮外交を「拙速」と批判している。特に、6月3日、岸田外務大臣が安倍首相の訪朝を示唆する発言を行ったことをあげ、実現すれば悪影響を及ぼす、と否定的な見解を示した。

 同紙は特に、北朝鮮の孤立化をやわらげてしまうこと、北朝鮮のミサイル・核開発計画に対する韓・米・日の同盟に亀裂が入ることを懸念している。

 さらに同紙は、日本は北朝鮮との関係改善により、右翼的政策により関係が悪化した中国・韓国に対し、交渉などで有利にたとうとしている、と批判する。

【安倍首相のこだわりの背景】
 韓国の中央日報は、背景にある安倍首相の拉致問題への実績を報じている。同紙によると2002年の日朝首脳会談時、安倍官房長官(当時)は、小泉首相(当時)に対し、「金正日が拉致を認めて謝罪しない限り、いくら事前に日朝共同声明を出すと約束していても決して署名してはいけません」と“咆哮するように”迫ったという。

 盗聴の危険を省みない発言の効果か、直後の首脳会談で金正日総書記(当時)が拉致を認め、謝罪したのだ。同紙によると、「安倍首相ほど北朝鮮の交渉術に長けている人物はいないだろう」と日本の外交専門家も分析しているという。

【米専門家の見解】
 また海外の専門家には、北朝鮮の現体制を崩壊させ、韓国と統一を図るべきというオピニオンもある。元CIAアナリストのSue Mi Terry氏(コロンビア大学ウェザーヘッド東アジア研究所)は、国際政治経済ジャーナル「フォーリン・アフェアーズ」への寄稿で、より強い対北朝鮮制裁を課して金正恩体制を崩壊させ、朝鮮半島の統一をめざすべきだとしている。

 同氏は、統一により韓国が得る経済的利点を次の通り挙げている。

・統一にかかる費用は、韓国が防衛費に当ててきた費用との相殺が可能な金額だ
・少子高齢化が進む韓国では、北朝鮮の若い労働力は魅力的だ。統一により、1700万人の新たな労働力を獲得できる
・資源の乏しい韓国が、北朝鮮国内の豊かな資源を利用できるようになる。この開発・利用により半島全体の経済を押し上げることができる

 さらに同氏は、統一によりGDPでドイツ、フランス、日本をもしのぐ国家が誕生すると予測している。

 拉致被害者の調査が進み、帰国が実現すれば、日本人にとっては朗報と考えられるが、総じて韓国などはそのようにとらえていないことが明らかになった。

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Text by NewSphere 編集部