日本の電気代も安くなる? 米ロのガス供給競争過熱で価格下落の可能性 海外メディア指摘

 5月21日、ロシアはパイプラインを通じて天然ガスを供給する契約を中国と締結した。ロシアは30年にわたり年間380億立方メートルの天然ガスを中国に供給し、その対価は4000億ドル規模だという。

【中ロの契約が日本を利する】
 ロイターは、ロシアと中国の契約は、アジアのガス需給に大きな変化をもたらし、ガス価格を押し下げると見る。この結果、原発稼働停止で減少した電力生産を補うため世界の液化天然ガス(LNG)出荷の約3分の1を購入している、最大輸入国である日本が最大の利益を得るだろうという。

 アジア向けのガス価格は世界の他の地域と比べて高く、「アジアプレミアム」と呼ばれるが、今後ロシアからパイプライン経由で中国にガスが送られれば、新たなガス価格の指標が形成される可能性があり、アジアのLNG購入国にとっては価格押し下げ効果が期待できるとロイターは述べる。

【アメリカのシェールガス革命】
 これに対して、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、中ロの巨額のガス契約も、アメリカのシェールガス革命のインパクトの前では見劣りするという、アメリカの国際政治学者ジョセフ・サミュエル・ナイ・ジュニア教授の論説を掲げている。

「水平掘削や水圧破砕技術は目新しい物ではないが、それをシェール(頁岩)に適用したのは先駆的であり、シェールエネルギー革命はアメリカ企業家精神の産物である」

「2020年代には北米はエネルギー的に自給できるようになるだろうというのが専門家の見方だ。エネルギー省の試算では、アメリカ国内には利用可能なシェールが25兆立方メートル存在している。他の石油、ガス資源と組み合わせれば2世紀間もつ量である」

「シェール革命は外交政策上も多くの意味がある。経済も雇用も良くなる。輸入が減るので国際収支も改善される。新税収で国家予算も楽になる。安価なエネルギーで産業の国際競争力が増す。特に石油化学等のエネルギー集約型産業においてだ」

【米ロがアジアでガス供給競争】
 一方、米ニュースサイト『クオーツ』は、アメリカとロシアがアジアでガス供給競争に入るだろうと述べている。

 先月の日本向けのLNG価格は1000立方フィートあたり15ドルだったが、ロシアと中国が結んだガス供給契約では同じ量が10ドルの計算になる。

 シェールガス・ブームに乗ったアメリカが製造したLNGが、来年アジアに輸出される際の価格は、シティバンクの見積もりによれば、10から12ドルになるという。

 消費者にとっては恩恵をもたらすだろうが、オーストラリアや東アフリカでLNGプロジェクトを展開中の企業にとって、米ロの競争は致命的な打撃をもたらすだろう、とクオーツは述べている。

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Text by NewSphere 編集部