愛国心煽る、空母「遼寧」の宣伝ビデオ、400万回再生 海外「まるでトップガン」

 中国唯一の航空母艦「遼寧」のミュージック・ビデオ(MV)「Leading the Dream(为梦想领跑)」が話題になっている。

 同空母の改良を請け負っている中国航空工業集団公司が、人民解放軍海軍の創設65周年を記念して制作した6分程度のMVである。同社の広報担当によると、中国の国防発展に対する大衆の理解を深め、愛国心を高め、「チャイニーズ・ドリーム」の実現に向けて若者を啓発することが目的だ。動画は、ハリウッド・リポーターによると、400万回以上再生されているという。

 中国人の愛国心を揺さぶるべく、MVには様々な工夫が施されている。

【「熱い血は心から湧き上がる」】
 映画「トップ・ガン」のオープニングさながら、朝焼けの海をバックに働く船員達が映し出される。高鳴るオーケストラとコーラスに合わせて、戦闘機が空母から離発着し、コックピットの中のパイロットがクローズアップされる。空母のデッキでは、戦闘機をバックに、船員達がウェイト・トレーニングに精を出している。

 白いジャケットに身を包んだ、口ひげのチベット人歌手が、航空母艦「遼寧」の栄光を力強く歌い上げる。

「我々は各地からやってきた、我々の熱い血は心から湧き上がる」パイロットが離陸し、海鳥がスローモーションで飛び、水面に虹の残像が光る。「海は深く、真の愛で満ちている」

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙、ハリウッド・リポーターは、この曲をカラオケにぴったりの曲と評している。

【愛国心の象徴】
 「遼寧」の戦略的価値については懐疑的な軍事評論家が少なくない、とニューヨーク・タイムズ紙は指摘している。1998年にウクライナから購入した、中国唯一の航空母艦「遼寧」は、長年にわたる改装と試運転の末、2012年に人民解放軍海軍により就役された。しかし、正規戦力としての空母の機能は未だに問題が山積みである。

 「遼寧」は、太平洋におけるアメリカの独擅場に対抗すべく、外洋海軍を作り上げるための重要なステップと、中国では考えられている。中国のニュースサイトによると、中国は現在2隻目の空母を建設しているとのことだが、まだ公的には確認されていない。

 今月6日に「遼寧」を視察したアメリカ国防長官チャック・ヘーゲルは「遼寧」のMVをお気に召しただろうか。それは定かではないが、ウォール・ストリート・ジャーナルによると、国防長官は中国の領土的野心に対して、はっきりと警告している。

「力によって、世界を支配したり、国境線を引き直したり、また地域の自治権や国の主権を侵してはならない。それが太平洋の小さな島であれ、ヨーロッパの大国であれ同じことだ」

 「Leading the Dream」は空母に捧げられた最も派手なビデオであろう。「遼寧」は、中国人の愛国心を刺激する定番の道具となった、とニューヨーク・タイムズ紙は結んでいる。

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Text by NewSphere 編集部