オバマ大統領機、中国の“防空識別圏”を突っ切る 対中外交に海外メディアから評価の声も

 アジア歴訪中のオバマ米大統領は、日本、韓国、マレーシアへの訪問を終え、28日、最後のフィリピンに入った。中国を怒らせずに包囲しようとしている、と評されるこの歴訪をはじめ、新機軸を謳っていたオバマ外交への評価はどうなっているだろうか。

【一超大国体制への反抗】
 ニューヨーク・タイムズ紙は、アジアでも中東でもウクライナでも、オバマ外交は思い通りに行っていないと評した。

 日本では、農産物輸入への抵抗により、具体的なTPP契約は樹立できなかった。北朝鮮は新たな核実験の動きがある。ウクライナ情勢はなおも緊迫しており、17日ジュネーブでの外相合意をロシアが破ったと、ケリー国務長官は口を極めて非難するに至った。

 そしてケリー長官が目玉政策として仲介してきた中東和平プロセスは、29日の期限切れを目前に、ヨルダン川西岸のパレスチナ穏健派ファタハ政権が、ライバルであるガザ地区の過激派ハマスと手を組むという、寝耳に水の展開を見せた。イスラエルは約束していたパレスチナ捕虜解放を履行せず、パレスチナ自治政府は報復として、国連15条約への加盟申請を出すに至った。

 ただしそれらはオバマ大統領の能力的限界というよりも、「単一超大国の甘言と脅威への頑強な抵抗という点でのみ」、すべて一致しているのだという。

【八方美人は限界】
 また同紙は別の記事で、同盟国を安心させ中国を牽制しながら中国との明白な対立は避けると言う、綱渡り外交の難しさを指摘した。日本もマレーシアもフィリピンも、中国と領土紛争を抱えており、どこまで明確なメッセージを出すかは難しい問題だからだ。

 元米国家安全保障会議の上級中国顧問であったジェフリー・A・ベイダー氏は、ほんの数フレーズの不用意な発言で今回の歴訪が明白な中国包囲ツアーになってしまう中、オバマ大統領はバランスをうまくとっていると評した。氏によるとオバマ政権は、経済基盤が弱いのにハッタリで制裁合戦を受けて立つロシアを、中国は真似すべきでない、というメッセージも送っており、今のところ中国は大人しくしているという。形だけのアメリカ批判はしているが、中国にとってアジア方面がうまく行っている以上、無理にアメリカと対決するつもりはないのだという。

 しかし、フィリピンでは米軍艦や航空機の基地利用拡大協定の合意が期待されており、これは中国に向けて「間違えようもないメッセージ」となる。さらに大統領専用機エアフォースワンが韓国からマレーシアへ飛行する際、中国が宣言した防空識別圏を突っ切って見せた事にも、同紙は注目している。

【皮肉屋どもを見返してみろ】
 タイム誌もウクライナや日本での無成果に加え、大量破壊兵器を放棄したはずのシリア政権が最近、塩素ガス弾を使用し、2人死亡・数十人以上負傷の被害を出したとの疑いがあることなど、オバマ外交に厳しい指摘をしている。ただし、どちらかと言えばオバマ大統領に対し、初志貫徹を叱咤激励するような論調ではある。

 同誌は「オバマが最初大統領に立候補したとき、彼は外交政策についての『ワシントンの従来の考え方』、特に外交で何を達成できるかについての『皮肉主義』と真っ向勝負すると約束した」と指摘した。つまり、大統領の言う理想論など実現不可能だと冷笑する「皮肉屋」について、今のところ彼らが優勢となってしまっており、大統領は奮起せよとのことである。

 同誌は、現在外交上の苦い結果をオバマ大統領一人のせいにしてしまうことは簡単だが、これはジョージ・W・ブッシュ政権からの負の遺産のせいでもある、と主張している。

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Text by NewSphere 編集部