ドイツが中国にうんざり? 日本批判にナチスを利用する手法に不快感

 習近平国家主席の独訪問を来月に控え、中国は第二次世界大戦を中核にした話し合いをしたい意向であると、ロイターは報じた。戦時中の過ちに真摯に向き合うドイツの姿勢を引き合いに出して、歴史認識の足りない日本に恥をかかせようという思惑であるという。海外メディアは引き合いに出されたドイツの反応を報じている。

【ドイツの歴史を引き合いに「反日宣伝」強化】
 ロイターは、習主席が独訪問の折、戦争について何を話題にしたいのかは不明確だが、中国指導部は近年の欧州訪問の際にも問題に言及していたと指摘する。また2012年にも、当時の温家宝国家主席が、ナチの占領下にあったポーランドに建てられたアウシュビッツ強制収容所を訪問し、「歴史を覚えている者だけが良い未来を築くことができる」と発言していたことを報じている。

 前週には南京大虐殺記念館などを案内する外国メディア対象のプレスツアーを実施し、その際にも「反日宣伝」強化の姿勢を明確にしたという。同施設の責任者は、「歴史的な過ちは誰でも犯すが、ドイツ人は過ちを認め同じ過ちは決して犯さないと誓った」と述べた。またドイツ人は素晴らしい歴史観を持っているのに対し、日本人はまったく正反対だと発言した。

 ロイターによると専門家は、中国が日本を批判することで、昨今の防衛費増加や防空識別圏の設定などに見られる自国の軍備増強から注目を逸らせる狙いがあるのでは、という見解を示している。

【謝罪を繰り返すも誠意を欠く日本】
 1995年、当時の首相であった村山富市氏が謝罪するなど、日本の指導者たちも繰り返し戦時中の行為について謝罪している。一方で保守派政治家たちの度重なる否定的な発言によって誠意を疑われる結果になっている、とロイターは指摘する。

 日本の外務省スポークスマンは、日本はこれまで通り平和的な道を進むとし、中国の挑発的な行為こそが地域の懸念要因であると指摘した。また国際報道官の佐藤勝氏は、東京は北京との対話を望んでいるとした上で、「かつての加害者の誠意と償いの行為は必須だが、被害者側の受諾なくして和解はあり得ない」と、中国の対応を非難した。

 またドイツ駐在の中国大使が独紙のインタビューに、靖国参拝を「ヒトラーの墓に献花するようなもの」と例えたことに対し、ドイツと日本を単純に神社参拝の点だけで比較するのは間違っていると述べたという。

【中国報道にドイツの反応は】
 中国国営メディアは、前月の中独国防省実務対話で、ドイツ側が中国の立場に理解を示す発言をしたと報じた。さらに中国各紙はドイツ当局者の発言として、「ドイツにとって歴史の教訓は厳しいものだった。深い反省と努力の積み重ねによって、国際社会からの信頼を得た」と掲載した。

 ドイツにとって事態は少々度を過ぎている、とロイターは分析する。外交筋は対談を振り返り、「ドイツ人は非常に居心地の悪い思いをしている」とコメントした。ドイツ政府はコメントを拒否したが、日中間の対立に巻き込まれたくないのが本音で、中国が度々暗い過去を引き合いに出すのを不快に感じているという。

 米QUARTZは、ヨーロッパにおける戦後の和解とユーロ圏の構築は、“戦争について触れない”という徹底した主義の上に成り立っている、と指摘する。ヨーロッパでは政治家がナチスドイツの横行や、残忍な虐殺について触れることはないという。いまやドイツは誰もが認める経済大国であり、重要なのは過去ではなく未来であると結論づけた。

戦争責任・戦後責任―日本とドイツはどう違うか (朝日選書)

Text by NewSphere 編集部