安倍首相を悩ます2つの抵抗勢力とは?海外紙が分析

 21日の参議院選挙で自民党が圧勝し、衆参「ねじれ国会」は解消された。安倍首相は「我々が改革から逃げる古い自民党に戻れば、すぐに国民の信頼を失うことになります」、「我々はもはや、ねじれ国会や野党のせいにはできません」などと改革推進の意気込みを述べている
 ただし海外各紙は、TPP問題や消費税増税問題、アベノミクス「第3の矢」の構造改革に対し、「抵抗勢力」の存在を懸念している。

【1.TPPや改革に抵抗】
 安倍首相はTPP参加を目指しているが、自民党内の抵抗は大きいと各紙は予測する。
 自民党の比例名簿1位は、米国からの独占批判にもかかわらず日本郵政の保険事業拡大を狙う「郵政ロビー」の柘植芳文氏であり、2位は農業保護を公約する山田俊男氏であった。 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、自民党比例名簿を、むしろ「強力な反TPP利益団体を代表する議員のリスト」と評している。
 フィナンシャル・タイムズ紙は、「多くが地方の代表である自民党国会議員の相当数は、米国主導のTPP参加権を追求する安倍の決定にも不満がある」と述べている。
 実際、衆参両院の自民党議員のうち200人以上が、「TPP交渉における国益を守り抜く会(旧:TPP交渉参加から即時撤退を求める会)」のメンバーであり、「安倍への敬意から」改称はしたものの、TPPへの嫌悪感は残っていると指摘されている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、順当に行けば今後3年間国政選挙がないことから、自民党の有力者らはその間、自らの影響力拡大に専念すると見ている。

【2.消費税増税に抵抗】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、一部の自民党議員が消費税増税に慎重な姿勢をとっていると指摘。一方で経団連が消費税増税に賛成していることを指摘し、来年の増税の是非を決断する安倍政権へのプレッシャーになることを示唆している。こうした現状から、内部分裂につながる可能性を指摘する専門家もいるという。
 同紙は、『与党内野党』の出現を警戒する必要があると論じている。

 なおBBCは、消費税増税やTPP以外に、安倍首相が今年後半にしなければならない決定事項として、法人税減税、電力業界自由化、「日本の多くは反対している」原子炉再稼働、憲法改正問題などを挙げている。

Text by NewSphere 編集部