ナイロビモール襲撃事件 住民間で拡大する差別と軋轢

 国際刑事警察機構インターポールは26日、ケニア当局の求めに応じ、爆発物所持、偽造パスポート所持、重犯罪計画などの容疑で、英国人女性サマンサ・ルースウェイト容疑者(29)を国際指名手配した。インターポールの指名手配は「赤い通知」と呼ばれ、加盟190ヶ国に回覧される。

 逮捕状では直接には言及されていないが、同容疑者は少なくとも67人が死亡し、72人が行方不明となっている、先週のナイロビのウエストゲート・ショッピングモール襲撃事件と関わっている疑いがあるという。

【イスラム教の英国人】
 同容疑者は「白い未亡人」と呼ばれ、本人はナタリー・ウェッブの別名も用いるという。北アイルランド出身で、十代のうちにイスラム教に改宗した。2005年7月7日、56人が死亡し700以上が負傷したロンドン自爆テロ事件の犯人の一人、ジャーメイン・リンゼーの未亡人であるが、事件との関与は否定し、脅されて結婚したと主張している。2011年ごろ、夫婦の子供2人と東アフリカに移動したらしい。

 同容疑者については、ナイロビモール襲撃事件で犯人グループの中に居たとの目撃証言がある。また、事件の犯行声明を出したソマリアのアルカイダ系武装勢力「アル・シャバーブ」との関係も疑われている。2011年12月には、同容疑者の仲間であったらしい英国人ジャーメイン・グラント容疑者が、爆発物所持などによりケニア・モンバサで逮捕されている。

 英当局は、モール襲撃事件に英国人の関与があったかどうかを言うには時期尚早であると述べている。

【迫害されるソマリア系】
 ガーディアン紙は、事件の余波により、ケニア国内でソマリア系住民への迫害が強まっている現状を伝えた。もともとソマリア系住民は起業家精神に富み、事業で成功している例が多いため、妬まれていたのだという。

 過去、ソマリア住民地区内のテロ事件でさえソマリア系の仕業にされ、そうした犯人は全く逮捕・起訴されることがない。ソマリア系住民の中からは、むしろ警察こそが今回、証拠隠滅のためにモールを爆破し、被害を拡大したとの見方も出ている。

【スラム都市の時代】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、モール襲撃事件の背景として、歴史上、現代は急増した人口が低湿な沿岸大都市のスラムに集中し、かつその人口が携帯電話やインターネットなどで連携されて、反政府行動やテロ活動などに大挙して押し寄せやすく、また地元の武装組織などが都市の死命を制する力を持ちやすい時代だと論じている。都市に人口が集中する事にはメリットもあるが、これからの政治は山奥でのゲリラ掃討戦よりも都市に目を向けるべきだ、との主張である。

Text by NewSphere 編集部