ECBと英中銀、異例の声明 欧州経済の行く先は?

 欧州中央銀行(ECB)とイングランド中央銀行(BOE)は4日、それぞれ、政策金利を今後最低水準にとどめるという発表を行った。ECBやBOEは伝統的に、このような将来の政策指針(フォワードガイダンス)を示してこなかった。
 海外各紙はそのねらいについて報じている。

【異例の公約発表】
 フォワードガイダンスとは、「現状の政策をいつまで続けるのか」についての当局者による表明を指す。これは、中央銀行による市場に対するシグナルとなり、市中動向に変化をもたらす。
 ECBの前総裁は保守的とされ、公約を行うことには長年抵抗してきた。しかし今回、ECBのドラギ総裁は発表に踏み切った。ドラギ総裁はその理由を、インフレが中期的に抑制されるとの見通しをECBが抱いているからだと説明した。
 なお長期間の低金利政策の危険性を警告してきたドイツ中央銀行のバイトマン総裁も、このフォワードガイダンスの効力を認めているという。

 実際、今回の発表に対し、欧州の株式市場は好意的な見方をし、株価は反発した。ニューヨーク・タイムズ紙によると、ロンドン証券取引所のFTSE100は終値で3.1パーセント、ユーロ50は3パーセント上昇したと報じられた。

【欧州経済の今後】
 ただ、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、今回のフォワードガイダンスは米FRBが行っているものより大まかなもので、今後の詳細なロードマップは作成されていないという。
 ニューヨーク・タイムズ紙も、この声明はこけおどしにすぎない、と評するアナリストがいることを伝えている。さらに、この声明は、ECBがユーロ圏経済を刺激するための方策を使い果たしたということを示すという見方もあるという。

 またフィナンシャル・タイムズ紙では、ドラギ総裁が、近年一層強まっている金融市場間の国際的な結びつきと不確定性が、経済状況に悪影響を与える可能性について述べていることを報じている。
 これは、米FRBが6月後半に、量的緩和策の縮小に向けたロードマップを提示し、金融市場の流動性が縮小する可能性が高まっていることなどにも関連している。
 米国の金融市場の流動性が低下することによって、欧州の金融市場が影響を受けることは避けられず、欧州の経済回復にとっては依然不確定な要素が多いといえる。
 なおドラギ総裁は、ユーロ圏の経済は徐々に回復していくという見解を明言したが、それでも未だ不安定な状態にあるとも述べている。

Text by NewSphere 編集部