カタールで異例の権限移譲、W杯を前に「若返り」か?

 中東のカタールで25日、ハマド首長(61)が四男のタミム皇太子(33)に権限を移譲することを発表した。同国では1971年の独立後、2度にわたり、父親である首長が外遊中に息子が無血クーデターを起こして政権を奪取してきた。湾岸アラブ諸国の君主が、存命中に権力移譲を行うことは異例な上に、今回のように自らその座を譲る行為は初めてと言われている。タミム皇太子は域内で最年少の国家元首になるはこびだ。
 カタールといえば、最近ではシリア内戦への介入でその名が報じられることが多かった。豊かな天然ガス埋蔵量に支えられたオイルマネーで、シリア内戦の勃発以来、約30億ドル(約2939億円)を投じて反体制派へ武器提供などを行なってきたと言われている。
 海外各紙は、首長交代やオイルマネーの活用によって同国が目指すものを交えながら今回の発表を報じている。

【権限移譲はアラブ諸国では異例?】
 存命中の首長交代は、より円滑な権力移譲を行うことを重視したためだとフィナンシャル・タイムズ紙などは報じている。
 一部の報道では健康上の理由も囁かれているが、現時点では公式な発表はない。ハマド首長は、時間をかけて世代交代について構想を練ってきており、万事を期しての発表となったようだ。
 基本政策に大きな変更はないとされているが、タミム氏の首長就任に伴い、同氏寄りの若手人材が次々と登用される予定だという。冒険が過ぎる決断として逆効果になるのではと懸念する声もあるようだが、今後は若い世代が主導し、国内や域内の複雑な問題に取り組んでいくことを期待しているようだ。

 首長と共にカタール政権の舵取りをしてきたハマド首相兼外相(53)も退任すると報じられている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ハマド首相は「若くて活動的で外交官の間でも人気が高い」とされており、退任となれば大きな損失だと指摘している。
 ハマド氏は、首相の座は退くものの、投資庁の責任者としての活躍は続ける可能性はあるとされ、今後の活躍に注目が集まっているようだ。同氏はこれまでオイルマネーを活用して積極的な投資や外交を行い、カタールの国際的な地位を高めてきた。

【潤沢なオイルマネーで、小国ながら知名度を上げてきた】
 人口200万人の小国ながら、液化天然ガス(LGN)の輸出量世界1位を誇るカタールでは、オイルマネーを利用し積極的に国際社会へ自国の存在感をアピールしていくことが重要だと考えているとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。
 シリア内戦だけでなく、民主化運動「アラブの春」で不安定な情勢のアラブ諸国に対して、反政府勢力の支援を行なってきた。
 他国の革命を支援することで自国への波及を防ぐことも狙いとしているとも言われており、実際に情勢は安定している。
 また同紙は、カタールは小国であるがゆえに、どの国への脅威にもならず、同国がオイルマネーで獲得しようとしているのは国際社会での知名度と敬意のみだ、と分析している。

 なおカタールは、2022年にはサッカー・ワールドカップの開催権を獲得するなど、多方面でその存在感をアピールしている。

Text by NewSphere 編集部