株価下落でも、追加対策をしない日銀 その理由とは?

 日銀は11日の金融政策理事会で、現政策の据え置きを満場一致で可決した。
 10日、政府が第1四半期のGDP統計を1.0%(年率4.1%)増に上方修正したのに伴い、日銀も経済評価を上方修正していたが、市場は日銀に、さらなる刺激策や国債市場の乱高下対策を期待していた。市場の失望を受けて株価は下がり、円相場と国債利回りは上昇した。

【対策見送りの理由】
 市場が期待していた対策は、上場投資信託や不動産投資信託の購入増や、日銀が各銀行に0.1%の利率で最大1年の融資を提供する、固定金利資金供給オペレーションの拡大などであった。
 しかし日銀は各銀行に対し、ローリスク・ローリターンな国債からハイリスク・ハイリターンな融資や株式などへの投資先転換を促す方針である。期待されていた対策は、方針に反するため見送られたと各紙は分析している。
 またフィナンシャル・タイムズ紙は、「前任者の下ではびこった、断片的な政策調整の悪循環を断ち切るつもりなのかもしれない」との専門家の見方も伝えた。

 ただし黒田日銀総裁は、長期金利の動きを警戒し続けるとは発言している。今回の政策理事会では見送りの結論が出たとはいえ、常時静観というわけではないと示唆している。

【金利上昇への懸念】
 黒田総裁は、「経済は堅実な回復経路上にあり、私は、金融市場が間もなくこれを反映して落ち着きを取り戻すものと期待しています」と述べた。
 フィナンシャル・タイムズ紙は、日本経済について、2014年4月に予定される消費増税を前に、住宅市場が駆け込み需要の状態にあることを指摘している。そのうえで、4月4日に黒田総裁が金利抑制を表明したにも関わらず、実際には国債市場において金利が上がり続け、取引量は大幅減少していると警告した。
 同紙はまた、経済評論家の藤巻健史氏(来月参院選に維新から出馬予定)のコメントを取り上げている。同氏は財政赤字を抱えながらのインフレ「期待通りインフレ率が上がったから金利が上がるというのは、よいのです。しかし市場が政府の信用リスクを心配しているからだとなると、話は別です」という、

Text by NewSphere 編集部