シリア内戦再び泥沼化 形勢逆転の理由とは?

シリア

 シリア内戦が再び泥沼化している。ほんの1ヶ月ほど前は、アサド政権が窮地に追い込まれ、内戦終結の可能性に期待が寄せられていた。政権側を支援するロシアさえも米国と協力し、話し合いによる解決策を模索する国際会議の開催に合意していた。
 しかし、国外からの支援を得た政権軍が息を吹き返し、争いの流れを変えつつあるようだ。
 海外各紙は、戦況の潮目を変えたクサイルの戦闘について報じながら、その背景にある問題の複雑さを取り上げている。

【政権軍、クサイル奪還】
 これまで、政府軍に対して優勢な戦いを進めてきた反体制派だが、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラによって勢力を増した政府軍には太刀打ち出来なかったようだ。
 反体制派は、最大の拠点であるクサイルにて政府軍の攻撃を受け、2週間以上に及んだ戦いの末、弾薬や戦闘員不足により撤退。北上し、ベイダへ移動したとフィナンシャル・タイムズ紙などは報じている。
 政権側は「クサイルを治める者が国の中心を治めており、すなわちシリアを治めている」と高らかに勝利を宣言しているという。
 同紙はまた、クサイル奪還は戦況を逆転するには至らないとしながらも、シーア派同盟を活用する政府側の戦略の成果が功を成すことを立証した重要な事態でもあると述べている。

 また、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、 国際戦略研究所のエミール・ホカエム氏による「クサイルをめぐる戦闘が反体制派を結束させていたのだとすれば、その陥落で反体制派の分裂が加速する可能性がある」との分析を取り上げた。複数グループの寄せ集めであるがゆえに分裂を見せ始めている反体制派の弱点に焦点を当てている。

 さらに、今回の勝利で政府軍が勢いづいたことにより、今月中の開催を目標としていた国際和平会議は来月以降にずれ込みそうだ。

【国家・宗派間対立へ発展か】
 クサイル戦における最も重大な要素はヒズボラの本格参戦だ。これは、他国を巻き込んだ宗教対立の象徴と言えると各紙は報じている。
 またニューヨーク・タイムズ紙は、イスラム教徒のスンニ派とシーア派が銃口を向け合う戦いになったと指摘している。
 戦場となった国境付近では、ビジネスや親交があった両者の関係がヒズボラの行動によって崩され、事態を複雑に悪化させたと報じている。近隣のレバノンやヨルダンなどでも、戦火の拡大によってさらに緊張が高まる結果となっているようだ。

 今後は、反体制派から欧米へ対して軍事支援の要求が強まることが予想される。
 すでにフランスは、今回の内戦で化学兵器サリンが使用された証拠が提示されたとして、国際社会が行動を起こすべきだと強調している。
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、対応を決めかねている米国の世論調査では、軍事介入への賛成が15%、武器支援が11%、支援なしが24%に留まっているという。ロシアが政権側を支援している限り、米国が介入したところで十分な効果は導き出せないのではとの見解もあり、米政府は決断に悩むところであろう。

Text by NewSphere 編集部