橋下氏が慰安婦発言を釈明 海外紙の評価は?

 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長は27日、問題視されていた13日の慰安婦発言について、東京の日本外国特派員協会で記者会見した。

【会見の背景】
 13日、橋下氏は、旧日本軍が従軍慰安婦を使用したことについて「慰安婦システムが必要だったことは誰でも判ります」と発言したと報じられた。
 また、沖縄の米軍兵士に対し、地元女性への性的暴行を防止するため、現地の「風俗産業」をもっと利用すべきだと発言したとも報じられ、米国務省から抗議されていた。

【橋下氏の主張】
 これに対し、橋下氏は記者会見で、自分の発言が不適切に翻訳されていたと訴えた。つまり、歴史的文脈において「戦時に」「世界各国の軍が」女性を必要としていたと発言したところ、「橋下氏自身が」必要と考え、容認していると誤報されたと主張した。
 橋下氏は、慰安婦を正当化、または容認することを意図したことはないと釈明し、「日本の過ちを正当化するつもりはない」と繰り返し訴えた。
 ただし、歴史的事実として、「日本のみ」が「国家の意思として」、「女性を拉致、売買」したことはない、と改めて主張した。これは2007年に閣議決定されている日本の公的な立場として、韓国の主張に反論した。
 さらに、「第二次世界大戦中のアメリカ軍、イギリス軍、フランス軍、ドイツ軍、旧ソ連軍その他の軍においても、そして朝鮮戦争やベトナム戦争における韓国軍においても、この問題は存在しました」と指摘。戦時の兵士による女性の尊厳の蹂躙問題について、各国が過去を直視し、「未来に向けて女性の人権が尊重される世界を作っていくべきだと考えます」と述べた。

 また沖縄米軍に対する発言については、不適切な表現だったとして撤回し、謝罪を表明した。その真意については、「一部の在日アメリカ軍兵士による犯罪被害に苦しむ沖縄の問題を解決したいとの思いが強すぎて」の発言だったと述べ、「在日アメリカ軍兵士による犯罪被害に苦しむ沖縄の現状をアメリカに訴え、何としてでも改善してもらいたい」と語った。

【海外紙の評価と分析】
 このような橋下氏の釈明に対し、海外各紙は概ね、苦しい説明と考えている論調である。
 タイム誌は「橋下は主張を支持する証拠を提供していない」と指摘。フィナンシャル・タイムズ紙は、「この説明は、彼の元の発言を日本のマスコミが転写した物と、競合するように見えた」と評している。

 また同紙は、橋下氏が当初の発言を行った意図について分析している。橋下氏とその党が、人気の高い自民党・安倍政権と路線がかぶっており、7月の参院選を前に埋没を恐れたからでは、とみている。
 同紙によれば、元々毒舌のコメンテーターとして台頭した橋下氏は、「息苦しい政治的正しさ」を攻撃してみせる手法を「過大評価している節がある」という。
しかし、今回の発言は、かえって維新の会の支持激減を招き、ある世論調査では3%の支持率しか残っていない。一方、自らも「侵略戦争の定義は相対的」と発言して釈明に追い込まれていたはずの安倍首相からでさえ、橋下氏は距離を取られていると報じられている。

 なお、記者会見は外国メディア向けのものであり、多数の外国記者が参加した。しかしニューヨーク・タイムズ紙は、むしろ、「グローバルな世論を左右しようと試みていたのだと、国内の有権者に訴えていた」と評している。

Text by NewSphere 編集部