マレーシア選挙は与党が勝利 勝因と課題は?

 5日のマレーシア総選挙で、連立与党の「国民戦線」が222議席中133議席を獲得し、89議席の野党連合「人民同盟」を破って勝利した。国民戦線を主導する「統一マレー国民組織(UMNO)」党のナジブ・ラザク首相は、2009年に同党のアブドラ・バダウィ前首相から交替して以来、初めて総選挙の洗礼を受けたことになる。
 マレーシアでは1957年の独立以来、一貫して国民戦線が政権を保持し続けてきた。今回も一見、順当に大差で勝利したように見えるが、各紙は、この勝利が非常に危ういものと指摘し、政権の今後を懸念する。

 まず133議席獲得と言っても、2008年前回選挙の140議席からすれば、7議席の後退である。その前回選挙にしても、国民戦線はそれ以前より議席を減らしていた。また、非公式統計によれば実際には国民戦線は、総得票率47%対50%で負けており、各紙は選挙区がゲリマンダー(与党有利になるよう意図された境界引き)されていたおかげで多数議席につながったと分析している。

 さらに、人民同盟や独立選挙モニターは、「外国人労働者などの替え玉投票」、「消せるインクの使用」(多重投票)などの不正があったと主張、30〜40議席の選挙結果について争うとしている。人民同盟リーダーのアンワル・イブラヒム氏は、8日夜に予定の大規模抗議集会への参加を呼び掛けた。

 また各紙は、今回の投票は人民同盟を支持する都市部住民と、国民戦線を支持する地方住民という傾向が、これまでになく明確であったと報じた。マレーシアは従来、裕福な華僑系住民に対し地元マレー人を優遇する政策を採ってきた。都市部には華僑系が多く、地方にはマレー系が多い。今回、華僑有権者は、華僑政党である「マレーシア華人協会」を含め、国民戦線をまったく見放したと報じられている。
 各紙はマレー人優遇政策のような古いシステムが、政治腐敗や経済低迷を招き、与党の不人気に繋がっていると指摘する。ナジブ・ラザク首相はマレー人優遇政策の慎重な見直しを図っており、アンワル・イブラヒム氏はもっと急速な改革を目指していた。各紙は首相が、連立内での事情からしても、民族間ないし都市農村間の対立を激化させないためにも、一層の配慮を必要とするものと論じている。

Text by NewSphere 編集部