サッチャー元英首相死去 世界で評価が割れた「遺産」とは?

サッチャー元英首相死去 世界で評価が割れた「遺産」とは? 英国唯一の女性首相で、「鉄の女」と呼ばれたマーガレット・サッチャー元英首相が8日、87歳で死去した。
 キャメロン英首相は「偉大な指導者、偉大な首相、偉大な英国人を失った」と語った。
 来週、ロンドンのセント・ポール大聖堂で軍葬での告別式が執り行われる。遺族の意向を踏まえ、完全な形での国葬は行わないという。
 海外各紙は、サッチャー氏の功績を称えつつ、英国内外で「遺産」の評価は割れたと報じた。

【サッチャー氏の功績】
 サッチャー氏は1979年から11年間首相を務め、これは19世紀初め以来最長記録となる。
 経済改革では国営企業の民営化や金融規制緩和を強力に推し進め、経済不振にあえぐ英国を救った。一方、多くの失業者を生み出したほか、欧州の同盟国を敵に回したこともあった。フォークランド紛争では、アルゼンチン軍を撃破して、同諸島の奪還に成功した。

 「グローバル化」「EU」「冷戦」への影響が3つの重要な遺産だとフィナンシャル・タイムズ紙は報じた。同じ保守主義とされるレーガン米大統領(当時)とともに、経済的活力のために富裕層への税を減らす考えの普及に貢献した。しかし経済ではグローバル化を推進する一方、政治のことになると国益重視だったと同紙は指摘した。
 国際的に英国の重要性を高めるためEUを遠ざけ、米国との「特別な関係」を目指した。この姿勢はキャメロン政権に強く受け継がれているとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。
 また、レーガン米大統領(当時)の他に、旧ソ連のゴルバチョフ書記長(当時)とも親密な関係を築き、冷戦終結に大きな役割を果たしたと報じられている。ゴルバチョフ氏は8日、自身の財団のサイト上に「サッチャー氏は言葉に大きな重みを持つ政治家だった」という声明を掲載した。

【割れる評価】
 妥協しない断固としたスタイルは英国内外で尊敬され、また嫌悪されたと海外各紙は報じた。ただ、彼女の観念的な敵も、信念の人として賞賛したとウォール・ストリート・ジャーナル紙は紹介。またニューヨーク・タイムズ紙は、死去当日でさえ、海外の政治指導者や国民は彼女の遺産の定義で対立したようだと報じている。

Text by NewSphere 編集部