BRICS開発銀行、設立へ 日本各紙が懸念する中国の対アフリカ姿勢とは

BRICS開発銀行、設立へ 日本各紙が懸念する中国の対アフリカ姿勢とは 26~27日、南アフリカのダーバンでBRICS首脳会議(中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカ)が開かれた。「BRICS開発銀行」設立に向け、正式な交渉を開始することで合意した。報道によると、開発銀行の細部については今回の会議では詰め切れず、各国の出資規模や本部の所在地などは合意には至らなかったという。
 日本各紙(朝日・読売・産経)は、主に中国のアフリカ進出という文脈でこれを報じ、懸念と日本の姿勢を報じている。

【中国のねらい】
 読売新聞は、BRICS各国がアフリカへの進出を拡大させる中、中国が“突出した存在感”を発揮していると報じた。2000年に100億ドル余だった中国の対アフリカ貿易は、2012年には1985億ドルに激増したという(中国商務省)。他のBRICS諸国の対アフリカ貿易は、インド2011年に641億ドル(過去10年で10倍)、ブラジルは同277億ドル(同5倍)であり、急増しているものの中国の規模には及ばない(JICA)。
 同紙は、中国にとって、自国経済の成長を守るために、資源が豊富で成長が見込まれるアフリカと、貿易・援助などを通じた関係強化が必要だとみている。非民主的な政治体制の国にも、「条件を付けず」援助を行う点が欧米諸国と異なる。実際、コンゴ共和国の外交官は「日本や米欧の支援に『物量』で勝った中国が、さらに進化してきた」と評したという。
 アフリカ各国のインフラ整備への融資が主な目的とみられるBRICS開発銀行についても、中国が主導することで、中国企業の進出に有利になるのでは、と朝日新聞は懸念を報じた。
 この点について産経新聞は、BRICS内部でも中国への警戒感はあり、ロシアやインドからはそれを示唆する発言もあがっていると報じている。

【アフリカの姿勢】 
 アフリカからも中国に対する批判の声はあがっている。ナイジェリアのサヌシ中銀総裁はフィナンシャル・タイムズ紙への寄稿で、アフリカが中国の「新しい帝国主義」にさらされていると警告した。
 また読売新聞によると、多くの一般市民は、アフリカに押し寄せる中国企業に対し不満を持っているという。中国企業は労働者から機材まで一式を持ち込み、原料を現地調達し完成品をアフリカ市場で売る、という指摘もあり、現地に雇用や技術移転などの恩恵はほとんどない。
 なお中国もこうした批判を強く意識しているようで、「中国製品が西側諸国の市場独占を打破し、アフリカに利益をもたらしている」(商務省報道官)と述べるなど、反論に躍起だという。アフリカからの留学生1万8000人への奨学金など、ソフト面の支援も打ち出している。

【日本の姿勢】
 一方日本政府は、中国のアフリカ進出に警戒感や懸念を抱きながらも、アフリカ側のニーズを踏まえた支援を通じ、対抗していく考えだと読売新聞は報じている。
 日本は、2003~2007年に平均約9億ドルだったアフリカ向けODAを、2012年までに倍増させる目標を掲げており、達成できる見通しだという。
 さらに資源開発での「中国との差別化」をキーワードに、人材育成センターを設けるなど、「量より質で対抗する」(外務省幹部)考えだと報じられている。
 2013年6月には、横浜でアフリカ開発会議(TICAD5)が開かれる。

Text by NewSphere 編集部