ミャンマー、民族紛争の実態とは

 ミャンマーの首都ネピドーで20日、海外からの支援の枠組みについて話し合う「第1回開発協力フォーラム」が開催された。2日間で開発戦略に関する「ネピドー・アコード」の採択を目指し、日本や米国、中国など26カ国・地域と、国連や世界銀行など33の国際機関などから600人以上が参加した。ミャンマーでこのようなフォーラムが開催されるのは初。
 しかし、軍政から民主化へと進む姿をアピールし、国際社会からの理解と協力を得る絶好の機会であるこの日、時同じくして、北東部カチン州で、軍がカチン民族独立軍を攻撃する事態が勃発した。
 海外各紙は、期待が寄せられるテイン・セイン政権の改革と、その裏で未だに展開されている民族紛争について報じている。

【国際社会の協力の下で発展目指す】
 フィナンシャル・タイムズ紙によると、フォーラムの冒頭スピーチでテイン・セイン大統領は「国民を中心とした政策で経済成長や生活レベルの改善を目指す」とし、「清新な政府への変革の最中にある」と話した。同氏が発表した3カ年計画では、主要10都市での貿易、外国投資、教育、医療、インフラなどの改善の他、社会経済の発展は国内の平和と安定を必要とするとして少数民族との争いの解決にも努めていくとした。
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、短期的なゴールとしては、バイク規制などによるヤンゴンの交通機関の改善。長期的ゴールとしては農業、製造業、産業の強化や、外国人投資法の制定、非課税措置の撤廃などが挙げられたという。今後5年間で、毎年7.7%の経済成長率を目指すとされる。
 今回、打ち出された政策に対して、海外からの評価は高いようだ。世界銀行は今年度の成長率を6.3%、来年度は6.5%としたものの、ミャンマーは政治改革によって成長する余地が大いにあると分析している。特に、豊富な資源を有効活用すれば、国民に質の高い社会サービスを提供することが可能になるだろうとした。国際社会からの支援内容は確定していないが、年間4億〜5億ドルと推測されている。また、日本は今月中に約5000億円の延滞債務の解消と、3月末までに約500億円の円借款を供与する方針を明らかにしている。

【民族紛争の現実】
 支援に向けた動きが進む一方で、最重要課題とも言われている少数民族との紛争は解決が難航しているようだ。 フィナンシャル・タイムズ紙によると、カチン州でカチン民族独立軍が地元の警察署を襲撃し、警察官が死亡したため、19日に軍が自衛目的で攻撃を行ったと報じられている。軍の攻撃を自衛目的とした政府の発表を受け、少数民族グループらは反感を示しているようだ。ニューヨーク・タイムズ紙によると、彼らは国連に対して意見書を提出し、「軍は自衛目的の活動をしているというミャンマー政府の発表を信じるのは、愚か者だけだ」などと抗議し、一方的な停戦宣言は少数民族ではなく、国際社会を意識したアピールでしかないと訴えたという。
 特にカチン州では、1994年に合意されていた停戦が2011年に破棄され、激しい衝突が続いている。政府は和平協議を持ちかけているものの、彼らはカチン州全体での停戦合意を求めており、政府側の真摯な態度が見られない限り、協議に不参加の姿勢をとっているとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。和解に向けた仲介を担うミャンマー・ピース・センターは、両者とも戦場ではなく卓上で話し合う必要があるとしている。これまでも10の少数民族グループが停戦合意に応じているが、いずれも長期的な政治的効力はなく、緊迫した状況が続いているという。今回のフォーラムでも、近い将来政府は彼らと政治的な話し合いを開始するとしているが、その関係性について過信している節があるとニューヨーク・タイムズ紙は指摘している。

Text by NewSphere 編集部