まとまらないヨーロッパだが、経済回復の兆し?

まとまらないヨーロッパだが、経済回復の兆し? 破綻銀行の直接救済を期待されていた、ユーロ圏の救済基金「欧州安定メカニズム(ESM)」について、所属国のコスト負担を義務付ける欧州委員会の草案が明らかになった。各国政府はESMの救済を求める場合、初めからESMと協調して資金を供出するか、ESMに損失が生じた場合それを補填する必要があるという内容だと報じられている。救済を求める国の財政に危険が及ぶことを防ぐとするESMの当初の目的は後退しかねない案といえる。

【内部対立の兆しか】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、ユーロ圏連邦予算や銀行連合の創設案もまた、昨年末のサミットで各国の支持を得られず後退していることを指摘。このような足踏みは、アイルランド、スペイン、イタリアなど、市場感情の迅速な改善を必要とする国が危機に追い込まれるかもしれないと警告した。欧州委員会のレーン経済担当委員は、「我々の患者は集中治療室は出たかもしれませんが、その健康に保証が与えられるまでには、まだもう少し時間がかかります」と評している。またバローゾ委員長は、(自身の解決策は)既存の銀行対策がEUの立法過程を通過してからになり、それは2014年になってもまだ続いているかもしれない、と述べた。

 内部対立の兆しがみられるEUだが、EU脱退の国民投票が取り沙汰されている英国も不安要因の一つである。フィナンシャル・タイムズ紙は社説にて、英国自身もさまざまな分裂に直面していると、皮肉な調子で指摘した。大企業は貿易の利益という観点からEU推進派が多く、中小企業のほぼ半数も「英国とヨーロッパとの関係の再交渉」を望んでおり、現状維持派は26%、脱退派は12%と少ないという。EU脱退を支持する人々も貿易メリットは理解しつつ、不確実な将来を懸念しているようだ。キャメロン首相自身も、「間違った選択」になりかねない国民投票には反対であり、今後の出方が注目される。

 一方ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ユーロ圏経済の明るい見通しを伝えた。好不況の転換の早期検出を目的とする、経済協力開発機構(OECD)の複合先行指標によれば、ユーロ圏の不況は底を打ち、他の主要経済国の成長も持ち直しつつあるという。2013年、OECD加盟国の合計GDPは2012年から変わらず1.4%成長、2014年には上昇して2.3%成長との見込みであるという。

Text by NewSphere 編集部