シリア和平案、最大の障害とは?

 内戦が悪化するシリア情勢の沈静化に向け、ブラヒミ国連・アラブ連盟合同特別代表らの動きが活発になっている。ブラヒミ氏は24日にアサド大統領と会談、29日にはロシアのラブロフ外相と会談した。
ブラヒミ氏は、以前から提示していた和平案の復活を改めて提案。米国など諸外国からは支持を受けている一方、アサド大統領の進退が明確にならないうちは話にならないとしてシリア政権側・反体制派双方からは拒否されている。
 海外各紙は、双方の深い溝や、アサド政権を支持してきたロシアの対応に注目している。

【アサドと和平は共存ならず】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、ブラヒミ氏は和平案に関して、シリア国民が求めている真の改革を実現できる「適切な案」であるとし、移行期が「国家あるいは国家機関の崩壊につながってはならない」と語っているという。暫定政権は次の選挙が実現できるまで「完全な執行権限」を持つとしたが、大統領選なのか議会選なのかなどの詳細は未定だとした。
 また提案当初は、ロシアの反対もあり、アサド大統領や現政権高官を新政権から追放することは明記されなかったという。しかし各紙とも、提案当初に比べ反体制派が優勢になり、アサド政権による被害が拡大するなど情勢は大きく変化しており、アサド存続の可能性があるままでは、この和平案の実現性は低いとしている。
 フィナンシャル・タイムズ紙によると、和平案を拒否している反体制派は、ワディ・デイフ陸軍基地などの重要地域において引き続き攻撃を展開しているようだ。首都ダマスカス周辺で最近勃発した衝突では、双方で合計81名、一般市民51名が死亡したという。

【ロシアの影響力はいかに】
 ニューヨーク・タイムズ紙は、ロシアでは、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争を集結させたように、まずは大国の圧力で両者を交渉の場につかせるのが理想的だという意見が濃厚だったと報じている。しかし、ロシアだけでなく米国やその他の関係諸国の影響力をもってしても、双方を向き合わせることは困難だとされている。ロシアも各勢力と話し合いを行うなどして和平に向けて協力的な姿勢を示しているが、これまでアサド政権を支援し、中国と共に3回も国連の介入を阻止してきているため、反体制派からは懐疑的な目で見られているようだ。

 反体制派が優勢な情勢においてアサド政権の限界が迫る中でも、「なぜシリアで内戦が長引くのか?」で分析したように、政権側は復讐を恐れて妥協が難しい状況だ。来月にブラヒミ氏とロシア政府、米国政府が開く予定の会合で、どれほどの進展か得られるかが注目される。

Text by NewSphere 編集部