相次ぐ米軍不祥事、問われる倫理

 米国防総省は15日、米軍幹部の不祥事が相次いでいることを受け、綱紀粛正や倫理教育の見直しを指示したことを明らかにした。12月1日までにオバマ大統領に報告をする予定だ。
 海外各紙は、不倫発覚により先日CIA長官を辞任したペトレアス氏以外にも不祥事を起こしている軍関係者が多くいることを挙げ、モラルが疑問視されている米軍の状況について報じている。

 今年は特に多くの不祥事が起きている。アフリカ地域担当のウォード大将の公費流用による降格処分、シンクレア准将の性犯罪問題、重婚・詐欺発覚により退任したジョンソン氏、日本を含む海外駐屯地での性犯罪や暴行など、役職のレベルに関わらず多くの問題が起きていると報じられた。フィナンシャル・タイムズ紙は、軍幹部による相次ぐスキャンダルは、10年以上にわたるアフガニスタン介入やイラク戦争によって指導者の規律が崩れてきている印象を与えている、と指摘している。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙はペトレイアス氏の不倫騒動を挙げ、タテ社会のヒエラルキーにどっぷり浸かってきた同氏は、ヨコ社会のCIA内では人望が薄かったと報道している。地位と共に権力がついてくると信じた威圧的な態度に反感を持つ人間も多く、度々組織内で衝突していたという。一方で、同僚らをジョギングに誘うなど、彼なりに親睦を深める努力をしていたようだが、どちらかというと体育会系な組織ではないため、空回りに終わっていたと指摘されている。不倫に関しても、機密情報の漏えいが確認できなかったため退任の必要はないのでは、との声もあったが、彼を弁護する者はおらず、早急な退任に追い込まれる始末となった。地位ではなく実力で他者からの信頼を勝ち取らねばならなかった環境において、軍の体質は通用しなかったようだと指摘された。

 ペトレアス氏の不倫騒動によって軍関連の不祥事は大きく世間の注目を浴びるようになったとされる。同氏の退任以前から軍の規律維持を目的とした倫理教育の見直しは計画されていたようだが、この度、政府による指示で実施に踏み切ることとなる。アメリカ政府は「大半の幹部は最高の倫理基準を体現していると信じている」と述べているが、今後の立て直しが注目される。

Text by NewSphere 編集部