EUサミット、銀行連合案に具体的決着を欠く―南北間の平行線続く―

 19日、EU首脳会談後の記者会見において、ユーロ圏の銀行監督一元化案が合意されたと発表された。しかし具体的なスケジュールは明らかにされず、来年1月1日からの早急な体制始動を目指す動きは頓挫した格好だ。
 フランスおよび経済危機に直面する南欧諸国は、破綻した銀行が、「各国政府の負担なしに直接基金へ救済を申請できる」銀行連合案に積極的であった。一方、納税者に不公平感が漂うドイツは消極的であった。ドイツのメルケル首相は、少なくとも来秋予定の選挙後まで問題を棚上げしたがっている、との見方が強い。

Financial Timesの報道姿勢―独仏の大喧嘩を思わせる表現―
 「怒りの表情で髪を振り乱す」「ツバとタンの応酬」など、オランド・フランス大統領とメルケル・ドイツ首相の大喧嘩を伝えるがごとき論調である。かつて「メルコジ」と表現されたほどの、サルコジ前フランス大統領とメルケル首相の協調関係が一転したことについて、左派のオランド大統領は党内結束のため、中道右派の前任者、およびその協力者との対決を演出する必要があると解説している。

The New York Timesの報道姿勢―バラバラな各国―
 各国の立場がバラバラなことを強調した。具体的には以下の通り。
 連合案を熱烈に歓迎するアイルランドやスペイン。それを支持し早急な実現を求めるフランス。「支払い能力のある国」として監督当局の強制執行力を確保したいドイツ。自分たちの銀行が構想に入るのか懸念する非ユーロ圏中東欧諸国。むしろ自国の銀行がユーロ圏と無関係な事を担保したいイギリス。今回の会談では存在感の薄かったギリシャ。
 首脳会談は妥協程度にしか至ることができなかったとの評価を伝えている。

The Wall Street Journalの報道姿勢―喉元過ぎれば熱さ忘れる―
 欧州危機が一段落したために遠大な戦略の構想が可能になったが、その分危機感が薄れたと解説している。ドイツは危機が最高潮の時が最も能動的で、その後ドイツの熱が冷めると、フランスや南欧諸国は自らの立場を押し戻しにかかっているという。
 フランスの経済状況も良いとは言えないため、ドイツとフランスの力関係は対等ではなく、ドイツとの協調をやめて南欧諸国の代弁者たらんとするオランド大統領の戦略は危険である、と警告する。

Text by NewSphere 編集部