中国の輸出、9月は9.9%増―景気回復の兆候か否か―

 中国税関当局は13日、9月の輸出額が1864億ドル(約14.9兆円)で、前年比9.9%増だったと発表した。特に東南アジア向けの輸出増が寄与したもの。対して金融危機の続くヨーロッパ向けは10.7%減となっている。なお、輸入は同じく2.4%増。
 大方の予想を上回り、最近では高水準の伸び率となったため、中国経済復活の兆候との見方もあるが、慎重論も根強い。また中国人民銀行も同日、9月のマネーサプライ(M2)が前年比14.8%増だったと発表した。

Financial Timesの報道姿勢―現場の声は苦しい―
 大幅な受注減や入金期日の延長など、ヨーロッパ向け輸出業者の苦境を伝えており、楽観的な論調ではない。ヨーロッパ向けに限らない総輸出の伸びについても、単に10月初頭の大型連休に先立つ駆け込み注文ではと分析している。
 中国では内需が伸びておらず、賃金も高水準になり外国工場の撤退につながっている事も不安視している。

The New York Timesの報道姿勢―政策の成功か―
 対米輸出の楽観を伝える声を紹介している。ただ、中国はアメリカよりもヨーロッパとの取引が多い点や、大統領選の時期に対米貿易黒字が拡大して摩擦を生じる懸念も指摘している。
 この時期の輸出増は、クリスマス商戦の始動や、iPhone5の大量出荷によるものとし、中国が家電製品などの高付加価値商品へと輸出構造を転換して来た結果が表れたと分析している。輸入の増加については、輸出部門が必要とした原料輸入との見方を伝えている。
 マネーサプライの増加についても、少なくとも部分的には政府の信用収縮緩和策が功を奏した、と評している。

The Wall Street Journalの報道姿勢―在庫調整が景気回復を抑制―
 輸出が伸びても生産増ではなく在庫調整での対応が続いており、GDPの伸びは政府目標に達しない見通しで、まだ景気回復とまでは言えないとしている。マネーサプライの増加も先月からの中央銀行の大量介入によるものとし、資金借り入れの減少と預金残高の増加を指摘している。

Text by NewSphere 編集部