イラン反政府デモの黒幕は?

 イランの通貨レアルは先週暴落し、火曜日には市場最低値を記録した。現政府は、西側諸国によるイランへの経済制裁が一因であることは認めている。アフマディネジャド大統領はさらに、政府の転覆や為替利益を求める国内の黒幕が不安をあおっていると非難。事態の鎮静化を保障し、国民に自重を求めた。しかしその翌日、商人たちがストを起こし、市民を巻き込む暴力的なデモに発展。警察が出動し、催涙ガスで対抗した。

Financial Timesの報道姿勢―経済危機に苦しむ市民の現政権への不満が噴出―
 FTは、レアルの急落に伴うインフレに苦しむ市民感情が、現政府への非難という形でついに爆発したと報じた。大統領が通貨安による混乱の収拾を確約した翌日にストとデモが勃発した。市民が公式見解よりもはるかに激しいインフレに苦しんでいるのは事実のようだとみている。デモに参加した市民は反大統領のスローガンを叫び、国の建物に投石し、火を放った。経済危機の原因として現政権の失政を指摘する声が多方面から上がっている、と報じた。なお、その陰に反大統領派の政財界の大物の存在を指摘する声もあると指摘した。

International Herald Tribuneの報道姿勢―大統領を陥れる陰謀なのか。不透明な中苦しむ市民―
 IHTは、イランを襲う経済危機を内外の黒幕のせいとする大統領側の主張を報道しつつ、現実の市民の苦しみに焦点を当てた。
 今回のストやデモについて、大統領の国内黒幕説に加え、外部からの圧力によるとする見方があるという。デモの逮捕者の中には、情報収集をしていた外国人が含まれていたともされる。議会やシーア派の指導者のなかにも、混乱を起こす闇金融業者の取り締まりを求める声はある。
 とはいえ、現実に苦しむ市民には、原因を分析する余裕はなく、通貨安を受けて外貨の購入に走る者は多いと指摘した。今回のデモでも、実際に一般市民が参加し、大統領の外交・経済上の失政を非難する声を上げた、と報じた。

The Wall Street Journalの報道姿勢―動乱の鎮静化と、隠しきれない危機的状況―
 WSJは、イランの動乱は、投石や放火という手段に出る市民と、催涙ガスや警棒で武装する警官隊の対立に発展したと紹介した。政府筋は、市場の混乱を招く闇金融業者の取り締まりを厳格化する構えで、商店のストに対しても逮捕も辞さない姿勢を見せているという。大統領は西側の制裁の原因である核開発から退く気もないとし、外貨の備蓄も豊富だと語っている。
 こうした政府の一見強気の姿勢により、国内情勢は一応の鎮静化を見せている 。しかしレアルの価値は低いままで、インフレも公式見解よりもはるかに激しい。さらに、大統領のいう「豊富な外貨の備蓄」も相当減っていることは確かである、と報じた。

Text by NewSphere 編集部