中国、党大会を前に薄氏を除名 党のねらいに焦点

 28日、国営新華社通信は、重慶の党責任者だった薄熙来氏が共産党から除名され、妻による英国人毒殺事件の隠蔽、長年に渡る収賄、複数の女性と不適切な性的関係を持つなどの党紀違反について「公正な裁き」を受けるだろう、と報じた。また、次の10年の指導体制への転換となる党大会が11月8日になると発表された。
 薄氏は、重慶における腐敗撲滅政策や毛沢東懐古主義政策で人気があり、新たな常任委員に選ばれる可能性もあった有力者だった。しかし、側近が米領事館に駆けこむなどの不祥事が起き、失脚。薄氏の消息については6カ月に渡り報道がなかった。妻の谷開来氏は8月に有罪が確定し、執行猶予付き死刑となった。薄氏もこれに準じた判決を受ける可能性がある。

Financial Timesの報道姿勢―党中央との関係・党大会の行方に焦点―
 FTは、薄氏が行った一連の大衆迎合・毛沢東懐古路線は、党中央指導部への権力一極集中体制という現体制に脅威であったと分析している。革命指導者を父に持つ薄氏は軽い罪に留まるという見方もあったが、今回告発された罪はたいへん厳しいもので、妻と同じ「執行猶予付き死刑」に処せられると専門家はみていると報じた。
 また、党大会の期日発表がこのタイミングになったのは、薄氏の処置を決めるためだったと関係者のコメントを取り上げた。党大会では、胡錦濤国家主席がどこまで影響力を残すのか、人数変更も噂される党指導部の人事はどうなるのか、成長にかげりが見える経済や領土問題などへの対処はどうなるのか、などに注目している。

The New York Timesの報道姿勢―背景にある党のねらいとは―
 NYTは、薄氏が告発されたことは、薄氏に対して厳しい処置を下さなければならない、という党上層部の合意を示すとみている。収賄や姦通などの罪を明記したことは、国民からの評判を傷つける卑劣な世論操作の意図が伺えると断じた。裏返せば、薄氏はそれだけ党指導部にとって脅威だったのではないか。実際、政府関係者や住民からも、なお薄氏への支持は厚いという声もあると指摘した。党中央が「薄氏の採用したイデオロギーを間違いとは言わなかった」点を評価する支持者もいる。一方で、薄氏の重慶統治時代には、組織犯罪とは何ら関係ない自由主義者を狙った弾圧が行われたことから、告発を歓迎する者たちもいることを取り上げた。

The Wall Street Journalの報道姿勢―息子の弁護―
 WSJは、薄夫妻の息子・薄瓜瓜氏(アメリカ在住)の声明を掲載した。瓜瓜氏は、当局による父への非難を「信じ難い」「私が私の人生を通して、父について知るに至ったすべてと矛盾する」と述べている。父親が厳しすぎる処遇に遭ったならば、内部情報に詳しいであろう瓜瓜氏が、中国指導部への強力な批判者たりえる可能性があるとの見方を紹介している。
 また瓜瓜氏は、殺害されたヘイウッド氏との関係にはコメントを控えた。ヘイウッド氏は土地取引トラブルに関し、瓜瓜氏を人質に母である谷氏に多額の金銭を要求していたとの説と、逆にヘイウッド氏と家族とは最後まで円満であったとの説があることを取り上げた。

Text by NewSphere 編集部