ファッションの祭典が門戸を開いて世界へ — そして次に向かうはサイバー空間

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著:Anthony Kentノッティンガム・トレント大学 Professor of Fashion Marketing)

 毎年、春と秋になると本格的なファッションシーズンが到来する。2016年秋に開催されたニューヨークのファッションウィークでは、カラフルなドレッドロックヘアーの白人モデルがサイケ調のショーを彩った。(ただ、のちに少々批判を浴びることになった[ドレッドロックへアーは有色人種特有の文化だという考え方がある])。そして、続いて行われたのがロンドンのファッションウィークだ。これら一連のイベントはいずれも、ファッション業界でお決まりの慣習を踏襲しているように見えるかもしれない。しかし、実のところ、きらめくようなスティレットヒールが踏みしめる地盤は移り変わっているのだ、しかも速いスピードで。かつて一部のファッション業界人向けだったファッションウィークも、今や広く一般に開放されつつある。

 本来、ファッションウィークは業界内のイベントだった。各ブランドが新シーズンのコレクションを見込み客のバイヤー向けに披露するためのものだったのだ。ファッションウィークの開催地はパリ、ミラノ、ニューヨーク、ロンドンといった都市に限られていた。そしてファッション雑誌や新聞の記者が、新たなスタイルやトレンドの情報を提供して業界と消費者のギャップを埋めることで、華やかな世界の流行を一般の消費者に伝える役目を担っていた。

 ファッションウィークで次のトレンドが示されたのを受け、商品注文を受けた衣料品メーカーは製作を開始し、6カ月後の春もしくは秋の販売に間に合わせる。大手のファッションブランドや小売業者もまた提示されたトレンドを取り入れ、次シーズンのデザインに反映させていった。このように、ファッション業界のカレンダーというのは、小売業者による注文から納品までの物理的プロセスのスピードに合わせて、合理的な秩序が組まれていた。

 しかし、これらの側面はいずれも変化を遂げている。ファッションウィークが、排他的な業界内の催し物から消費者参加型のイベントに進化しているのだ。

◆ファストファッション
 現在、サンパウロ上海など、新たなファッション都市として国際的なファッションシーンを担う都市が増えており、必然的にファッションウィークも開催されるようになっている。ファッションウィークのキャットウォークも、ポップアップイベントやフラッグシップ店所在地など、多様な場所で見られるようになった。

 最新のファッションが世間に届くようになった状況を反映するかのように、キャットウォークに面する観客席最前列の様子も進化している。以前は業界関係者埋まっていたが、今ではセレブやブロガーの姿が見られるようになってきたのだ。ソーシャルメディアの拡大に伴うブロガーの急増により、ストリートファッションの再循環がすすみ、より多くのファッションやスタイルが生み出されることになった。ファッション製品が納品されるまでの時間も短縮されて、キャットウォークで目にしたものがわずか数週間で小売店、もしくは消費者に直接届けられるようになった。

 消費者が豊かになり、消費が増大するとともにファッション小売業も成長してきた。デジタル革命によって消費者が期待するものも前の世代とは変わってきており、その影響力は今までにないほど大きくなっている。彼らはファッションの情報やサービスにアクセスするだけでなく、オンラインで好きなときに好きな場所で、商品を購入することができる。そしてこういったパーソナライズ機能は、消費者がソーシャルメディアを介して、世界中から思い思いのファッションリーダーやデザイナー、ブランド、そしてストリートシーンを選択することにより続いていくだろう。

 需要と供給の仲介役となる新興メディアや通信技術は、ファッションとファッションウィークの両方に変化をもたらした。「ファストファッション」は本来、デザインやファッションそしてそのラインナップが急速に移り変わる様子をあらわす言葉だったが、今ではより新しくて斬新なルックス、そしてメディア上の解説やビジュアルの意味合いも含まれるようになった。


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ミラノファッションウィークで、セルフィーをとりながら登場するモデルたち
FashionStock.com / Shutterstock.com

◆スタイルの共有
 インターネットによって消費者がファッションウィークをフォローする方法、そして製品を購入する方法は様変わりした。ウェブ4.0(人と機械のインタラクションを可能にする新世代ウェブシステム)の登場で、とりわけモバイル上の新たなコミュニケーションおよびショッピング用チャネルが開拓され、ブランド各社はオンラインとオフラインの両方でプレゼンスを構築するようになった。また、インタラクティブなソフトウェアによってトレンド発信し、ファッションとスタイルが共有できるようになり、スタイルのマッシュアップの可能性も広がった。スマートフォン、タブレット、アプリ、ソーシャルメディアなどの新しいハードウェアの形と高機能のソフトウェアを使っていつでもどこでもファッションブランドと関わり、つながることができるようになったのだ。

 このような技術進歩により、ファッション業界の物理的な面とデジタル面が急速に融合してきた。消費者の影響力と選択肢が拡大するにつれ、ファッションの時間と空間の神聖さは薄れている。

 ファッションではビジュアルの優位性が強いため、イメージの生成および消費が重要となる。しかし、ファッションウィークについてコメントするのは今やプロの写真家や編集者、ブロガーだけではない。ソーシャルメディアでは画像や動画が簡単に交換できるため、スマートフォンのユーザーはPeriscopeなどの配信アプリを使ってファッションショーのライブストリーミング動画を視聴できる。 モデルは皆キャットウォークの端でインスタグラム向けのポーズをとり、ファッションハウスは新作コレクションの舞台裏画像やプレビューを紹介している。

◆グローバルな将来像
 未来に目を向けると、これからのファッションウィークは文字通り、世界中のファッション界から影響を受けたデザインを披露していくことになるはずだ。アフリカの新進気鋭のデザイナーからめまぐるしく動くアジアの市場まで、さまざまなインスピレーションを得ることになるだろう。現実の、またはイメージ化された歴史から生まれた文化遺産が自発的で実験的なスタイリングと共存することになる。

 それぞれのファッション都市にはその土地特有の、それでいてインターナショナルな魅力を持ち、かつ都市自体の物理的な空間によって定義されなくなるだろう。ファッションウィークは特定の場所で行われるのではなく、バーチャル環境やリアルと仮想が混合する環境によって補完され、さらには取って代わられることになるかもしれない。そして消費者は、より高機能で小さく便利な個人用スマートデバイスを使うことによって、さまざまな場所で開催されるファッションウィークにエンゲージできるだろう。

 新しい形の拡張現実やバーチャルリアリティによって、消費者はファッションを3次元で実体験することができるようになる。これが、より強力な双方向性と知覚的なエンゲージメントを可能にする新バージョンのWebによって実現する。

 ローカルの3Dプリンターを使えば、消費者はファッションウィークで体験したものを自分で製作し、最新のファッションやアクセサリーのデザインを自分好みにアレンジすることができる。とりわけ、今期待が高まっているのが、新素材やスマートテキスタイル(スマート繊維)だ。ファッションデザインやその概念化、表現方法において、さらに重要な役割を担うようになるのではないかと考えられている。ファッションウィークの新しい形、また別の形をインスパイアする可能性に加えて、持続可能性も持ち合わせるはずだ。

 ファッション「ウィーク」という時間枠自体も安泰とは言えない。飽くなき欲求を抱くオンライン消費者に合わせて、より柔軟で、パーソナライズされた別の時間軸に代わってしまうかもしれない。我々が将来エンゲージすることになるのは、彼らのような消費者である可能性が最も高いのだから。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by isshi via Conyac
eye catch photo by AS photo studio / Shutterstock.com

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Text by THE CONVERSATION