TPPの問題点とは? 海外の反応まとめ

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)は、太平洋を取り囲む12ヶ国間で、貿易や投資の自由化やルール作りを進めるための国際条約だ。

 交渉国は、日本、アメリカ、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイ、豪州、ペルー、ベトナム、マレーシア、メキシコ、カナダだ。

 TPPの議論は多岐にわたる。国内外の報道では、日米の溝がクローズアップされがちだ。日米は2013年4月の協議で、「日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品といった二国間貿易上のセンシティビティが両国にあることを認識」している。しかし、実際の交渉では合意できず、問題となっている。

 TPP問題に対する海外の反応をまとめる。

1)TPP交渉、日米以外の10ヶ国は“傍観状態”と海外報道 合意形成に暗雲か

 TPP妥結に際して肝となるのは日米間の関係だと海外メディアは見ている。フィナンシャル・タイムズ紙(以下、FT紙)は、交渉の遅れの主因を「緊張の高まりを終結できない日米」に置く。ビジネス・イン・バンクーバー紙(以下、BIV紙)も、交渉のこの段階では、日米を除くTPP参加国(10ヶ国)のほとんどが傍観者となると述べている。

(安倍政権は構造改革、オバマ政権は新たな通商ルールの基礎の確立、どちらもTPP交渉を通じて達成したいことがある。問題点を明確にし、広い視野に立って協力すべき、という主張もでてきた。)
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2)TPP交渉米代表、日本に「明確なビジョン」求める “日本の譲歩が必要”と英誌

 エコノミスト誌は、「日本の農家が (TPPに)対応するには、まだ時間が必要だ」としながら、先の交渉決裂について「アメリカはもっと譲歩するはずだと日本側が判断したのなら、とんだ計算違いだ」と批判。「その証拠に、アメリカは自動車部品の輸入で関税を引き下げる提案を取り下げた」と同誌は指摘する。ある日本の政治家は、この一連の流れについて「1980年代の日米貿易摩擦以来、最も厳しいエピソードだ」と語ったという。

(日本側のチグハグな態度を、政府や米紙は批判する。一方、アメリカでも国内のTPP抵抗勢力の反対は強いようだ。)
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3)「譲歩しない日本とカナダをTPPから外せ」米議員140名が大統領に陳情

 (共和・民主超党派議員団のオバマ大統領に宛てた)書簡は、日本が「前例のない、受け入れられない」提案をしていると非難、他の交渉にもダメージを与え得る前例となってしまうと主張している。『The Hill』は「もし関税撤廃が拒絶されたまま合意が結ばれたら、アメリカとEUとの交渉にも影響する」と述べている。
 また書簡は「両国が譲歩しない場合は日本およびカナダ抜きでTPP交渉を進めるべきだ」と主張しているとのことである。

(かなり極端な主張だが、こうした動きはTPPの障害となるだろう。当記事に対して、日本のソーシャルメディアでは、「言われなくても抜けてやらあ」という反発が目立った。)
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4)ショーン・ペンら米セレブ、イルカ漁の中止訴え TPPによる圧力をオバマ大統領に求める

 手紙の中でシモンズ氏らは、イルカ漁の禁止が「自国の利益にかなう」として、TPPにその主張を盛り込むよう過去2年間努力してきたことを訴えている。
 シモンズ氏は、TPPに反対ではなく、イルカ漁の禁止を話し合いの中心に置くべきとの考えであることを強調している。同氏は「人が持つ憐れみの心は、経済的利益と同じくらい尊重されるべきじゃないか?」と問いかけている。

(3とは別の切り口で、TPPを脅迫材料に使う発想の運動。イルカ漁の問題視に対するアプローチとしてTPPが使われるとは…。)
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5)TPPは“ミステリー” 海外紙は日米の懸念報道 安倍首相は交渉決着に自信

 グローバル・ポストは、「TPPはミステリー」と述べる。良くも悪くもTPPが与えるインパクトは計り知れないとしながらも、その機密性が問題だとしている。
 アメリカの市民は、TPPの内容を精読することはできず、議員たちですら交渉からは除外されている。米議会が承認するかを決める前に、協定内容をチェックする充分な時間があるのか、議員の間でも不満が出ているという。

(5月の記事。TPPでアベノミクスに弾みをつけたい安倍政権だが、その方針に課題も多いと報じられている。)
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6)TPP見送りは“強圧的な”アメリカのせい? 海外報道と日本の違いとは

 ただし、内部告発サイト「ウィキリークス」が公表した漏えい文書によれば、アメリカはTPP交渉参加国に対して、要求に従うよう“強烈な圧力”をかけていることが明らかになった。フォーブス誌によると、文書には、知的財産分野だけで19の未解決問題が生じており、仮に日本が大筋合意しても、年内の妥結に至らなかった可能性が高い。

(米紙は日本の問題を指摘する一方、日本の産経新聞などは、結論先送りの最大の要因は「米国の強硬姿勢」だと断じている。日米双方のTPPに対する困難が伺える)
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7)TPP交渉、新聞報道なぜ真逆? 読売は“前進”、産経は“停滞”…海外は「不透明」と判断保留

 19日~20日、シンガポールでTPP閣僚会合が行われた。秘密交渉だけに、進展はあったと強調する報道もあれば、なしと評する報道もある。同一人物の発言に基づいていても、である
 フォーブス誌(元米国務省のスティーブン・ハーナー氏寄稿)は、アメリカの日本への自動車市場開放要求について、まったく不当な内容だと厳しく批判する。安倍政権の側についても、「概ね妄想」である中国脅威論にとらわれるあまり、アメリカの機嫌を取ろうと譲歩し過ぎるおそれがある、と警告している。

(TPP問題に関して、米メディアの中には、上記のようなスジの通った論説もある。)
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Text by NewSphere 編集部