ハラール 海外の反応まとめ

 増加するイスラム教徒の観光客に向けた対応が、日本に求められている。

 近年、「ハラール」という言葉を目にする機会が徐々に増えている。米ニュースサイト『デイリー・ビースト』によれば、アラビア語の形容詞で、「許された」という意味だそうだ。この語が冠された食品は、イスラム法すなわち神によって、口にすることを許された食物、ということである。そのハラールをめぐって、日本企業や政府が対応に迫られている。

 イスラム系メディアの『ガルフ・タイムズ』は、日本企業が、海外へのハラール食品の輸出に注力しようとしていることを報じている。

 また、関西国際空港は、増え続けているムスリム観光客を取り込む目的で、ムスリム向けのサービスを提供することに動き出した。その他でも、イスラム圏の顧客に合わせたビジネスを展開する動きが日本国外で多く見られるようになってきた。

 他方、ザ・ディプロマット誌は、イスラム圏と日本の関係性という別の観点から、ムスリムにとって日本は文化的にも馴染みやすい国であると評価している。
 
 以下、昨今の主要な海外の反応をまとめる。

1)115兆円「ハラール」市場、日本企業が食品輸出など注力か イスラム教国メディアも注目

『ガルフ・タイムズ』によると、世界のハラール市場は、2013年には1.1兆ドル(約115兆円)の規模だったが、2018年には1.6兆ドル(約168兆円)に達すると見積もられているという。

 同紙は、日本各地で、イスラム教徒の旅行者を迎える準備が進んでいるのと並行して、日本企業が、海外へのハラール食品の輸出に注力しようとしていることを伝えている。

(同紙によると、日本を訪れるイスラム教徒の数は、2020年には100万人に到達する可能性があると見積もられている(ハラール旅行促進組織、シンガポールの「CrescentRating」の予測)。現に、日本のビザ緩和などもあり、昨年、イスラム教国のマレーシアから17万7千人、インドネシアから13万7千人の旅行者が日本を訪れている。)
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2)「イスラム教徒向けうどん」も登場 関空のチャレンジに海外も注目

 関西国際空港は8月末、イスラム教徒(ムスリム)向けのサービスを拡充して、「ムスリム・フレンドリー」となる計画を発表した。まずは、イスラム教の戒律に基づくハラール食をうどん店「ざ・U-don」で提供開始する。背景には、東日本大震災や外交問題を抱える中国からの来日者数の減少がある。新たなターゲットとして、ムスリムに目を向けたのだ。

 イランのIRIBラジオは、日本全体が東南アジアからの来日を誘致していく方針であり、関空の動きはその第一歩であるとみている。

 一方で、イスラム圏以外の読者の多いニュースサイト「Japan Today」では、今回の関空の動きについて、特定の主教を優遇している点や、空港税の支払いに関しての批判的なコメントが多く集まっている。

(新たな顧客としてイスラム教徒に焦点を当てた関西空港の取組みを取り上げた記事。ムスリム人口の多い東南アジア諸国からの来日者が大幅に増加している状況を鑑みるに、ここでの商機は大きいといえる。)
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3)一風堂がマレーシア進出 海外でのラーメン人気も…イスラム圏で豚骨はどう戦う?地元紙も注目

 マレーシアのニュースサイト『The Star』では、ラーメンチェーン「一風堂」の海外進出を大々的に取り上げている。一風堂は、過去にもニューヨークや韓国、香港等に急速な事業拡大を図っていった背景がある。

 人口の70%がイスラム教徒であるため困難が予想されるが、豚肉を好む人口をターゲットに市場進出を狙う。今後3年間で5、6件の店舗オープンを視野に入れているものの、マレーシアでの事業拡大に明確な計画はないという。

(経営戦略本部執行役員本部長の山根智之氏は、多くの国へ進出する一方で、継続的に既存店舖の改善を図っていく方針を明らかにしている。ビジネスのトレンドがめまぐるしく変化する中、日本のラーメンがアジアで最新のトレンドとなるか否か注目を集めている。)
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4)イスラム教徒“東京は戸惑うが生きやすい”…無関心さのおかげ?海外が報じる日本とイスラム教の関係

 ザ・ディプロマット誌は、東京の人々の正確さ、従順さ、他人に無関心であることが、イスラム教徒の生活を安易にしている要因であると説明し、戸惑うことは多いものの、東京での生活はイスラム教徒にとって住みにくいものではない。と論じている。

 イスラム研究者、桜井啓子教授によると、1990年代にはイスラム教徒の学生が日本の大学に入学し始め、1986年の1957人から2004年までに6758人まで増加した。現在人口が世界10位規模の日本ではイスラム教徒のコミュニティが12万人にまでなっているという。

(日本国内のイスラム教徒は増え続けている。また世界的なイスラム教徒の観光市場拡大という観点からも、日本国民がイスラム教についてもっと知り、国全体でイスラム教徒を受け入れる基盤が必要となっている。)
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5)ハラール対応の鯨肉、高島屋の礼拝室… 進む日本のイスラム観光客受け入れ体制

 APによると、デパートの高島屋は東南アジアからのイスラム客増加に伴い礼拝室を開設したという。室内には、メッカの方角が示されているとのことだ。

 昨年は、日本の捕鯨船がハラール認証を取得した。鯨肉をハラール食として提供しようという試みだ。さらにはハラールの米や醤油の輸出も準備段階にあるという。このように拡大するハラールビジネスだが、その一方でもう少し需要の母数が増えないと商売としては難しく、経過を見守る必要がある、との声も聞かれる。

(マレーシアの食品会社ブラヒムズの代表であるバダウィ氏は、まだ日本はイスラム教徒の観光客にとって不安要素が多く残り、対応が十分ではないとAFPに語っている。2020年東京オリンピックに向け、訪日観光客の増加を目指している日本政府にとって、イスラム教徒の観光客に向けた対応が求められている。)
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Text by NewSphere 編集部