アベノミクス×女性 海外の反応まとめ

 日本の女性の社会進出をめぐる議論が、国内外で巻き起こっている。

 急激に高齢化が進み労働力が不足する日本では、女性の就労増が急務であるとされ、アベノミクスの柱のひとつとなっている。安倍内閣は、2020年までに女性管理職を30%に引き上げると公約しているが、長時間労働や現行の税金制度が女性の社会進出を阻んでいる。

 海外のメディアでは、日本の残業文化を女性が社会進出する上での大きな問題点であると指摘している。

 そのような海外の指摘に対応する形で、安倍内閣は女性の社会進出を経済成長のカギとする「ウーマノミクス」を打ち出し、国内における女性の社会的地位の向上に乗り出した。

 以下、昨今の主要な海外の反応をまとめる。

1)残業文化変えないとアベノミクス失敗? 女性の雇用、健康問題… 海外メディア指摘

 日本の雇用慣行である長時間労働が、女性の職場進出を阻み、働き盛りの世代の心身を蝕んでいると、海外からの批判を集めている。

 日本女性の60%以上が第一子出産後に仕事を辞める、とカナダのメディア『Leader Post』は報道している。マタニティ・ハラスメントが辞職の一因、とメルボルン大学の大石奈々教授は指摘する。

 労働力人口減少の危機に直面している日本は、貴重な人材を失うことを何としても避けなければならない。種々のハラスメント、いじめ、長時間労働から労働者を守る法律が制定され施行されるなら、日本の労働力不足を解消できる、と海外メディア『Lexology』は指摘している。

(安倍晋三内閣は、2020年までに女性管理職を30%に引き上げると公約している。しかし、長時間労働が女性管理職の増加を阻んでいる。女性の社会進出を政策の筆頭に掲げている安倍内閣だけに、今後の行方が注目されている。)
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2)日本は育児とキャリアが両立できない?「女性の活躍推進」掲げる安倍政権に、海外報道は悲観的

 急激に高齢化が進み労働力が不足する日本では、女性の就労増が急務であるとされ、アベノミクスの柱のひとつとなっている。しかし、海外各紙は概ね悲観的なようだ。

 豪ABCは、育児とキャリアの両立を阻む2つの要因を伝えている。保育所の不足と、社会の理解不足だ。

 さらに雇用の格差も立ちはだかる。ブルームバーグは、パートや派遣など増え続ける非正規雇用に着目している。その多くは女性だ。

(ブルームバーグによると、モルガン•スタンレーMUFG証券のロバート•フェルドマン氏も、「アベノミクスは女性の社会参加など労働問題のいくつかに取り組んでいるが、女性は男性の補助的な仕事をするもの、という社会的通念がまだ根強く残っている」と指摘しているという。)
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3)経団連27社、女性登用に数値目標 安倍首相「ウーマノミクス」本格化?海外紙が指摘する課題とは

 タイム誌は、安倍首相が「ウーマノミクス」を激賞していることを紹介し、首相の考えはここに端を発すると報じている。ウーマノミクスとは、女性の就労拡大により日本経済を発展させるという考えで、キャシー松井氏(ゴールドマン・サックス証券株式会社マネージング・ディレクター)が1999年に提唱した。

 こうした背景から、経団連は14日、女性の役員・管理職登用に関し、目標を定めた会員企業の行動計画を公表した。

 日本の女性の雇用については、海外メディアは度々厳しく報じている。ウェブ外交誌『ディプロマット』は、日本の女性は「竹の天井(東洋人の出世をはばむ見えない壁)」に直面していると指摘する。タイム誌も、「男性中心社会を変えるのは大変な努力が必要だ」(オリンパス元CEOマイケル・ウッドフォード氏)との言葉に言及し、困難な道のりを憂慮している。

(ウェブ外交誌『ディプロマット』は、今後検討すべき課題として、配偶者の所得が103万円未満の場合、配偶者控除を受けられるという税制面の優遇措置、育児休業制度の見直し、待機児童の解消を挙げている)
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4)「女性管理職30%」目標、“残業文化”が最大の壁…このままでは厳しいと海外から指摘

 安倍政権はアベノミクス成長戦略の中で、女性の社会進出を重要課題と位置付けている。育休後の女性の職場復帰や女性管理職の登用を施策の柱とし、女性管理職については2020年までに30%に増やす計画を掲げている。

 日本企業に残業して当たり前という文化があるうえ、家庭の子育て負担は母親1人が背負っているのが現状、とブルームバーグは指摘している。メルボルン大学の大石奈々教授は、長時間労働を強いる企業文化が変わらない限り、いくら安倍政権が力を入れても女性自身が昇進を望まないだろう、と同メディアにコメントした。

(近年では、長時間労働を見直す企業も出てきた。例えば日立は、長時間労働をやめ、能力実績給与体系を導入し、2020年までに女性管理職を2倍の1000人にする計画だという(ブルームバーグ)。)
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5)配偶者控除の廃止で女性のフルタイム労働者は増える? 海外紙は“アベノミクス加速”と評価

 ゴールドマン・サックスのキャシー松井汎アジア投資調査統括部長は、「政府が本気で女性労働者を増やしたいのであれば、女性の給与を引き下げる要因となっている税金制度を廃止すれば良い」と語る。

 野村証券チーフエコノミスト木下智夫氏も、控除の壁を取り払うことで女性のフルタイム労働者が増える可能性があると考える。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの尾畠未輝氏は、配偶者控除を廃止することは安倍首相の目指す持続的成長を長期的に支えることになるという見方を示し、アベノミクスが目指す好循環をもたらすだろうと分析した。

(エコノミスト誌は、女性労働者を現在の男性労働者の規模にまで増やすことで、800万人の労働力を追加することができると報じた。世界でも大きく遅れをとっている女性の社会進出は、日本が直面する大きな課題の一つである。)
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6)ラガルド氏、日本に“女性の雇用改革”を求める アベノミクス成長戦略への期待大

 IMFのラガルド専務理事は、ニュースサイト『USポリティクス・トゥデイ』に公開されている議事録の中で、アベノミクスを評価している。第1の矢である大胆な金融政策については、現状満足であるとの意向をしめし、第2の矢の機動的な財政出動については、期待感を表明した。しかし、第3の矢としての民間投資を喚起する成長戦略については、不満をあらわにした。

 AFPは、安倍首相がアベノミクス第3の矢である成長戦略の中核として、「女性の活躍」を掲げていることにふれ、ラガルド氏は「女性の活躍」は構造改革における極めて重要な要素であるとの認識を持っていると報じた。

(同氏は、世界経済が危機的な状況からは脱したといえるが、さらなる経済回復には大胆な政策措置が必要であると発言した。世界的にもアベノミクスが注目を集める中、安倍首相が大胆な行動に打って出ることができるのか、今後の動きが気になる。)
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Text by NewSphere 編集部