少子化対策には現金給付が一番? フランスは手当プラス働く母親を全面サポート

 厚生労働省によれば、2015年の日本の合計特殊出生率は、1.46となり、2014年の1.42からわずかだが上昇した。しかし、現在の人口を維持するのに必要な出生率2.1にははるかに及ばない数字だ。経済的な理由で結婚できない若者も増加しており、日本の少子化を食い止めるには、明確な対策が必要だと海外メディアは見ている。

◆未婚、晩婚化が進む。収入の少なさも大きな原因
 明治安田生命生活福祉研究所の調査、「2016年 20~40代の恋愛と結婚」によれば、20代の独身男性で結婚願望がある人は3年前の約67.1%から38.7%に低下し、20代の独身女性でも82.2%から59%に減少している。30代の場合でも、結婚したい人は男性40.3%、女性45.7%とそれぞれ10%以上の減少となった。年齢が上がるほど結婚願望は低下しており、女性にその傾向が強い。これは、キャリアアップや「おひとりさま」志向に影響されていると考えられるという。

 結婚に際し、独身女性の半数以上が、相手に少なくとも年収400万円以上を希望しているが、その条件を満たす独身男性は20代で約15.2%、30代で37%しかおらず、理想と現実の年収の大きなギャップが、「未婚化・晩婚化の一因と考えられる」と調査は指摘している。ロイターは、未婚で子供を持つ人が日本では少ないことから、結婚をしない若者が増えることは、参院選を控え出生率1.8を目指す安倍首相の公約にとって、障害となりそうだとしている。

 晩婚でも子供を持つ機会を諦めてもらいたくないとし、女性の卵子の冷凍保存に助成金を出す自治体も現れた。浦安市は昨年度から3年間で9000万円の予算を取り、通常1人50~60万円かかる費用の約8割を負担する。もっとも、妊娠する確率は、卵子凍結時25歳の場合で30%、34才の場合で20%と低い。同市の松崎秀樹市長は、「一般的に、妊娠出産は個人の問題だが、状況がここまでになった今では社会問題だ」とし、助成は正しい判断だと述べている(AP)。

◆フランスは優等生。手厚い手当で子育て奨励
 日本同様、少子化は多くの先進国で進んでいるが、出生率2.01のフランスは「欧州で最高のベビーメーカー」と評されたと、ニューヨーク・マガジン(NYMAG)は述べる。「Global Aging Institute」の人口統計学者、リチャード・ジャクソン氏によれば、フランスは19世紀の欧州においては最も大きな経済と人口を誇っており、衣食住や公共衛生が充実したことから、最初に少子高齢化を経験し始めたという。そして1870年に普仏戦争がおき、フランスはドイツ(当時はプロシア)に負けるが、このときの敗因として、出生率の低下が上げられた。これは、「経済の活力は人口の大きさにかかっている」という考え方とも一致しており、以後国として子供を増やす政策が取り入れられたという。北欧のノルウェーなどよりもずっと早く、赤ちゃんに優しい政策を取ってきたらしい。

 ジャクソン氏は、女性の自由な生き方が主流となる1990年代までは、先進国でも女性が働かない方が子供は増えていたが、今日では「女性が働くほど子供が産まれる」と説明する。ただし、家庭と仕事の両立ができるサポートを国が行なっていることが条件だ。フランスでは、母親は産休の16週間は満額の給料を受け取ることができ、3人目の出産の場合は、26週間まで拡大される。子供を持つ母親に支給される政府の家族手当も3人目からは増額され、託児所の日常的な利用も、むしろ子供の社会化につながると肯定されている(NYMAG)。

◆各地で少子化対策進行中。効果抜群なのはやはり…
 公のサポートと出生率の向上に密接なつながりがあることは、日本でも数字として現れている。ビジネスインサイダー誌は、出産育児一時金として通常払われる42万円に18万円を上乗せした東京都港区の出生率が、23区で最高となったことを紹介。また、第1子に10万円、第4子になれば100万円の出産祝い金を出す島根県隠岐郡海士町の出生率が、2014年の1.66から2015年は1.80に上昇したと伝えている。

 もっとも、投資グループCLSAのクリストファー・ウッド氏が言うように、東京のような子育てにお金がかかる都市では、子供1人に1000万円の補助を出さなくては人口問題の解決にはならないという意見もある。それでも同氏は、有意義な助成金は子育てを促し、景気浮揚策にもなると述べ、経済的インセンティブに勝るものはないと主張している(ビジネスインサイダー)。

 やはり少子化対策に最も効き目があるのは、現金かもしれない。

Text by 山川 真智子