“数合わせではなく政策論争を” 民主・維新の理念なき統合に海外メディアは冷ややか

 夏の参議院選挙に向け、民主党は維新の党と3月中旬に合流することで合意した。両党代表は、党名も変え、自民党に対抗できる政党を目指すと意気込むが、海外メディアは新党の在り方に疑問を投げかけている。

◆落ちた民主党
 自民党独走のなか、何をやってもぱっとしないのが、日本最大の野党、民主党のイメージだ。維新との新党結成の発表の前に、ジャーナリストのネビン・トンプソン氏も、民主党の力不足をウェブ・メディア『Global Voices』で指摘している。

 同氏は、「民主党は嫌いだけど、民主主義は守りたい」をスローガンにした民主党製作の「自虐的」ポスターが、夏の選挙戦を前にその必死さを物語っていると述べる。自民党のままでは「非民主的」な政策が続くと訴えたが、ポスターはマスコミやソーシャルメディアでけなされ、信頼を得られないままだと指摘している。

 2009年の選挙で民主党は地滑り的勝利を収めて政権を奪取し、政治の新時代到来かと思われたのだが、変人の政治的リーダーシップ、内紛、東日本大震災や原発事故で気づかされた無能さのため、多くの日本人は民主党を信用しなくなったと同氏は述べる。「感動的に浮揚し、劇的に沈下」した民主党は分裂の危機にあり、日本で影響力のある野党が不在となる恐れもある、と指摘していた。

◆理念なき新党に苦言
 低迷する現状を打開するため、民主党は維新との合流を決めたわけだが、サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙(SCMP)は、新党に否定的な声を紹介している。

 明治大学国際総合研究所客員研究員の奥村準氏は、新党は「古い枠組みの再結成。行く当ても、未来も、核となる有権者も、スターもいない2党だ」とし、「新しい党名やのぼり」だけでは有権者は得られず、「違いを出した政策なしで、与党とどう戦うのか」と辛辣だ。テンプル大学日本キャンパスのアジア研究者、ジェフ・キングストン氏も、「再出発のため新しい外見が必要な両党の、やけっぱちな行為だと感じる」と述べ、自民党が気にすることはないだろうとしている。

 ディプロマット誌に寄稿した国際関係に詳しいミナ・ポールマン氏は、目に見える改革の欠如と両党の政策の違いは、選挙展望において期待される合流のポジティブな効果を削いでしまうと指摘。野党は先を争って打倒自民のための用意をするが、単なる数合わせでなく、政策論争をしたり、みなが合意できる主義原則に基づいた見解に達することにフォーカスすべきだと述べる。同氏はまた、日本の政治はイデオロギーの欠如で知られ、リーダーはアイデアよりも権力を得るために画策し、共産党以外は、基本的なイデオロギーの違いは政党間にないと主張する。野党共闘の動きにも注目する同氏は、野党がまとまり、じっくりと立ち位置について話し合うようになるまでは、党間の合意や合流の動きを見るだけで、自民党以外の真の選択肢を国民に提供することはできないだろうと述べている。

◆目標は3分の1
 海外メディアは、新党に懐疑的だが、チャンスが全くないわけではないと見ている。

 ブルームバーグは、ここ3年間スキャンダルに免疫のあった安倍政権だが、最近の不祥事の洪水は状況を変えそうだと指摘。不祥事の追及が予算審議の時間を食い潰すほどになっており、経済の低迷や市場の混乱も手伝って、今年夏の選挙を前に、支持率低下が進むかもしれないと述べている。

 SCMPは、前回の選挙は投票率が低く、自民党の大勝はその半分の有権者の投票によってもたらされたと指摘する。キングストン氏も、投票率の低さが自民を助けたと述べており、安倍首相の政策に反対する層を動かすことで、議席は奪えるだろうと見ている。

 同紙はまた、安倍首相の目的は衆参両院で3分の2の議席を獲得し、改憲を達成することで、これが不可能になることを懸念していると指摘。衆参どちらか一方で3分の1の議席を取ることが、安倍首相の野望をくじくため新党が結束する「シングルイシュー(ただ一つの争点)」になるかもしれないとしている。

Text by 山川 真智子