産経前ソウル支局長“解放”、国内外の批判が影響? 朴政権、米国へ配慮か

 朴槿恵大統領の名誉を毀損したとして在宅起訴された、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長が、約8か月に渡って続いた出国禁止措置を解除され、14日に帰国した。海外メディアの報道から、今回の措置の背景を考える。

◆措置は人道的配慮?
 ロイターは、今回の件に関し、加藤氏が日本の家族と離れ離れになっていたこと、母親が病気であることなどから、『人道的に考慮』した検察の判断だったという韓国メディアの見解を伝えている。

 日本側の声としては、産経新聞の小林東京編集局長の「これは重大な言論の自由の侵害であり、一刻も早い起訴の取り下げを求める」と述べた裁判に対する批判や、韓国に対し「適切な対応を求めていきたい」という菅官房長官のコメントを引用。加藤氏の起訴を遺憾とし、このような法的措置が報道の自由を侵害し、日韓関係を害するとして、日本政府が懸念を示してきたことも伝えている。

◆アメリカへの配慮
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、韓国では、刑事事件で検察が被告に出国を認めるのは極めて稀であると指摘する。しかし、韓国外交部の魯光鎰(ノ・グァンイル)報道官は「韓日関係とは無関係」との立場を示し、「この件は検察当局が法と原則、事件処理の基準に基づいて捜査を進めて取った措置」と説明。「これを外交問題化しようとすることは望ましくないという立場に変わりはない」と強調した(聯合ニュース)。

 主要メディアで、韓国が今になって出国禁止措置解除をする理由を明確に報じたところはなかったが、背景のひとつには、日韓関係を巡るアメリカへの配慮がありそうだ。

 ハンギョレ新聞(8日付)は、8日に掲載された読売新聞のインタビュー記事で、アメリカのアシュトン・カーター国防長官が「過去の緊張や現在の政治より未来に目を」と発言したことを報じ、韓国に及ぼす外交的衝撃は侮れないとしている。同紙は、日韓関係の悪化は「韓国政府が過去の問題にしばられている」ためとアメリカが理解していると指摘。2月には「いかなる政治指導者も過去の敵を非難することによって安っぽい拍手を受けることは難しくない」というウェンディ・シャーマン国務部次官の演説もあったことから、これが「韓国政府と韓日関係に対する米当局者の共通した認識」だと分析している。

 もしも韓国政府の認識が同様であるなら、日韓関係の障害となってきた加藤氏の出国禁止措置を解除したことは、韓国側の危機感の表れとも取れそうだ。

◆衰退する言論の自由
 さて、カリフォルニア大学サンディエゴ校のステファン・ハガード客員教授は、先月、中央日報に「韓国の『言論の自由』順位が落ちる理由」という記事を寄稿し、「韓国の『表現の自由』は懸念されるほど衰退している」と述べている。その理由のひとつとして「名誉毀損に対する持続的な処罰強化」があると指摘。「名誉毀損罪は記者や市民を逮捕や公判前拘禁などの対象にする可能性」があり、力ある者に悪用されかねないと説明する。

 「名誉毀損処罰は言論の自由に冷や水を浴びせる効果をもたらす」と述べる同氏は、表現の自由の衰退は前政権と現政権で加速していると述べ、この問題に対する国際社会の懸念はますます強まっていると警告している。

Text by NewSphere 編集部