安倍首相に追い風 統一選に与党勝利 安保、原発など「不人気政策」が本格化と海外メディア

 12日、統一地方選挙の前半戦が繰り広げられた。10道県知事選、5政令市長選、41道府県議選、17政令市議選の投開票が行われた。与野党の対立候補が争った北海道と大分県知事選では、自公が支援した現職知事が再当選した。これを含め、10知事選すべてにおいて、与党が支援する現職が当選した。ただし、うち6知事は、自公と民主の相乗り候補だった。また、道府県議選では、全2284議席中1153議席を自民党が獲得し、統一地方選挙で24年ぶりに過半数を獲得した。

 ロイター、AFPは、今回の統一地方選挙と国政との関連を重視している。ロイターは、今回の選挙は「アベノミクス」にとっての試金石だと評されていたと語る。AFPも同様に伝え、自民党自身そのように見なしていたと伝える。

◆アベノミクスへの評価が結果につながった、と自民幹部
 ロイターによると、アベノミクスの恩恵は、東京以外の地方には十分に行き渡っていない、との批判がある。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙のブログ「日本リアルタイム」は、地方の一部の被雇用者と経営者に、大都市とそれ以外の地域で富の格差が拡大していることへの不満が高まっていて、自民党は過去1年間で、3県の知事選(滋賀県、沖縄県、佐賀県)で敗退した、と伝える。それゆえ、今回の勝利は、安倍首相にとってはっきりと良い知らせだ、としている。

 自民党の茂木敏充選挙対策委員長は、12日夜、選挙の結果を受けて、「これは大きな成果だ」とし、今回の勝利は、主として、連立与党による地方経済再生の取り組みへの、有権者の期待が大きかったためだと語ったという(AFP)。菅義偉官房長官も、13日午前の記者会見で、「全体として、アベノミクスの実績への評価、地方創生への期待が表れた結果だと思う」と語っている(産経ニュース)。

◆選挙まで控えていた、不人気政策への与党の取り組みが解禁される?
 今回の統一地方選挙で、とりわけ注目を集めたのは、与野党の対決型となった北海道、大分県知事選だった。その2つで勝利を収めたおかげで、安倍首相にとっては、国防力強化と原発再稼働という、世論を二分する政策を推進するお膳立てができた、とロイターは語る。北海道知事選では、野党候補の佐藤のりゆき氏が、「脱原発」を掲げていた(が当選には至らなかった)ことを記事は伝える。世論調査によると、日本国民の大多数は、原発再稼働に依然として慎重である、とも伝えている。

 また、日米は、安倍首相が今月ワシントンを訪問する前に、TPP交渉で合意に達することを望んでいる、とロイターは語る。もし農業の盛んな北海道の知事選で自民党が敗北していたら、その取り組みは難しくなっていた可能性がある、としている。

 ブルームバーグも、知事選で、連立与党の支援する候補者が席巻したことで、安倍首相がデリケートな国防計画、貿易計画を推進するのが容易になった、と語る。安全保障法制の整備は、公明党の平和主義の党員を敵に回さないようにと、今回の選挙終了まで保留状態にされていた、と記事は語る。また、TPP交渉での、アメリカとの合意に向けた取り組みについても、農業団体の支持を損なう危険があった(ために控えていた)、としている。

 自民、公明両党による、安全保障法制に関する協議会は、14日より再開される。

「今回の選挙のために、安倍首相は不人気な政策における進展を先送りしていました。今や選挙が片付いたので、安倍首相は前進することができます」とテンプル大学ジャパンキャンパスのアジア研究学科ディレクター、ジェフリー・キングストン教授はロイターに語っている。統一地方選挙の後半戦が4月26日に控えているが、それらは「より規模の小さい地方自治体での選挙」だと記事は語る(市区町村議会選挙)。

 12日夜のNHKの番組で、自民党の谷垣禎一幹事長は、「10の知事選挙のすべてで勝つことができたのは大きな成果だ。後半国会にもプラスの意味を持つのではないか」と語っている。

◆過去最低の投票率
 今回の統一地方選挙では、投票率の低さが大きな特徴となった。知事選挙の投票率は、全体平均で、過去最低の47.14%だったほか、道府県議会議員選挙の投票率も、平均45.05%で同じく過去最低となった。

 日本経済新聞(13日)は、知事選での低投票率について、与野党が事実上の相乗りで現職を推す構図が大半を占め、有権者の関心が十分に高まらなかったためとみられる、と分析した。

 「日本リアルタイム」は、この低投票率は、新たなアイディアを持った新たな顔ぶれに欠けているため、地方政治への関心が減少している表れに見える、と有権者と専門家が語っていると伝える。道府県議選で、過去最大の議席(21.9%)が無投票当選になったことを記事は伝える。また、知事選の大半でも、本当の争いはなかった、としている。

 ロイターによると、今回の選挙に対する有権者の関心が低かったのは、一部には、野党の力のなさの表れであると専門家が語ったという。ブルームバーグは、安倍首相の経済政策や安全保障政策に納得していないと多くの有権者が述べているが、野党勢には力がなく、分裂している、と語る。

 一方、WSJ本紙は、この低投票率を、むしろ、首相に幅広い支持が欠けていることの表れとみる見方のあることを紹介している。

Text by NewSphere 編集部