日印、南シナ海での船舶航行データを共有へ “中国船監視のため”と印紙

 中谷元防衛大臣とインドのマノハール・パリカル国防大臣は30日、東京で会談を行ない、日本とインドが防衛協力をさらに強化していくことで一致した。また、両国は、インド洋や南シナ海での船舶の航行データを共有する準備を進めていくとしている。

 2014年9月、インドのナレンドラ・モディ首相が日本を訪問した。このとき日本とインドは、海上防衛と領土問題の平和的解決を促進するため防衛協力強化を約束したが、今回の話し合いは、その約束を実行し、両国の関係をさらに深めることを確認したものだ。

◆軍備強化を進める日印
 安倍晋三首相は2012年就任以来、集団的自衛権行使を容認するための平和憲法の再解釈、10年間減少していた防衛費を増額、武器輸出の解禁などを行ってきた。インドもまた、インド洋と1万4000キロにおよぶ北の国境線の支配権を再び握るため、軍事費を増額し、インド軍の近代化をすすめている(ブルームバーグ)。

 中国の影響力拡大に対抗する道を模索している日本とインドは、防衛関係強化を約束した、とブルームバーグは報じる。経済的・防衛的利益が、アジアの中で軍事費第2位と第3位の国を近づけたのだ、と記事は論じる。また、安倍首相とモディ首相の個人的にも親しい関係は、中国に対する不安の共有によって生まれている、ともみている。

 日本と中国の関係は、歴史問題と、尖閣諸島をめぐる意見の相違で冷え込んでいる。インドと中国の関係も、過去5年間、国境線をめぐり散発的な衝突を繰り返している。モディ首相は2月、中国に対し「領土の拡大志向」を止めるよう警告した。同時に、自国の弱さが、中国軍のインド領土への侵入を許しているとも述べた(ブルームバーグ)。

◆商業的情報で中国海軍監視
 今回の話し合いでは、日本とインドが、インド洋と南シナ海の出荷データを共有する方針も決められた。インドは日本に、インド洋での船舶の航行データを提供し、また、日本は、見返りとして、インドの戦略的利益となる南シナ海での情報を渡すこともできるという(タイムズ・オブ・インディア(TOI))。

 これは、中国の存在を念頭に、海域での戦略的協力関係を強化しようとするものだが、TOIやインドのカルカッタ・テレグラフ紙(以後印テレグラフ紙)によると、交換されるデータは、主として商業的なものだ。しかしながら、印テレグラフ紙は、日本とインドが、南シナ海やその他の海域での情報を交換し、中国の船を注意深く監視するための協力だ、と報じている。

 インドは現在、国家海上領域認識(NMDA)計画のもと、アフリカ東岸から、南シナ海まで、24の国と船舶の航行情報を共有することで、海洋監視システムの構築を進めている(TOI)。尖閣諸島領有権問題で中国と対立している日本もまた、中国海軍の動きを見張るため、フィリピン、ベトナム、マレーシアと協力している、と印テレグラフ紙は報じる。

◆日本製軍装備の導入は確定していない
 両大臣は、防衛装備品とテクノロジーにおける協力可能な分野について協議を行い、今後、双方に利益のある共同プロジェクトを推進していく必要性を強調した(ブルームバーグ)。

 日印は、日本製の救難飛行艇US-2と、原発の輸出などについて、話し合いを進めている。印海軍の次期主力潜水艦候補に上がっている日本の「そうりゅう」型の導入については、まだはっきりと決定していない、とTOIは報じる。そして、日本は経験不足から、競合するロシアやフランス、ドイツ、その他の国に競り勝つのは、難しいだろう、とみている。

 一方、少なくとも12機の水陸両用航空機US-2の購入については、両国政府間での直接的な取り決めだとし、確実性は高いとみているようだ。

Text by NewSphere 編集部