集団的自衛権の法案成立を確実にするため? 日米ガイドライン見直し延期へ

 日米両政府は19日、防衛協力のためのガイドライン見直しについて、締め切りを6ヵ月延期することを明らかにした。

 10月に日米が公表した中間報告では、「日本にとって、ガイドラインの見直しは、自国の領土と国民を守るため、また、国際社会との協調を原則にした“平和のための積極的貢献”という方針を進めようとの努力によるものだ」としている。

◆急な衆院選で予定が遅れた
 年末までにとしていた予定が繰り延べとなった理由として、日本の総選挙で、与党が対策に追われていたため、また、11月に米国防長官だったチャック・ヘーゲル氏が辞任したためだ、とロイターは報じている。

 19日の日米共同声明では、「来年の前期中には、日本の法整備も考慮しながら、ガイドラインの見直しを完了するため協力していく」としている。

 江渡聡徳防衛大臣は同日、「締め切りに間に合わないのは残念だ。しかし、更なる改善のため話し合いを深めるのは良いことだ。また、日米協力が一層強まることにも繋がるだろう」と述べた。

◆防衛協力見直しは、中国への牽制
 ロイターは、見直しについて、東アジアでの自衛隊の活動をより顕著なものにするためだ、と報じている。2013年秋、ガイドラインを17年ぶりに見直すことを決めたのは、北朝鮮の核の脅威、中国軍の増大に対抗しようとするためだ、とみている。

 アメリカは軍の60%をアジア太平洋地域に配置しており、同盟国である日本とオーストラリアには、より大きな役割を担って欲しいと考えているようだ。見直しが完了すれば、日米同盟の内容をこれまでよりも拡大することになるだろう。

 安倍晋三首相は、日本がアジア太平洋地域で、”積極的平和主義”を実行できるようにと熱心だ、とウェブ外交誌『ディプロマット』は報じている。防衛協力のガイドライン見直しが先送りされる一方で、このような動きは、アジアの、はっきり言ってしまえば中国に対して、日米が地域の紛争にどう対応しようとしているかのサインだという。アメリカは、尖閣諸島を巡る衝突が生じた場合は、日本の支援にまわると発言した。新しいガイドラインでは、日米が相互にどう連携するか、地域の危機にどのように対処するかが明確に示される重要なものになるだろう、と同誌はみている。

◆国会審議が難航すれば更なる遅れも
 安倍首相は、自衛隊の活動や同盟関係の中での役割拡大を押し進めている。しかし、国内世論や連立を組む公明党からも反対にあった、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。日本の大多数は、そのような変化には憲法の改訂が必要と考え、再解釈に抵抗を感じている、と指摘した。

 ロイターは、延期の決定が安倍首相に、防衛のための同盟関係を明確にする憲法の再解釈に関し、国会議員の支持を確実にする時間を与えるものだ、とみている。

 首相は、防衛方針転換に対する国民感情に配慮をしてきた。集団的自衛権行使とされる同盟国防衛のための自衛隊派遣には厳密な制限をかける、と説明している。この方針転換を実際的なものにするためには、国会が法案を承認しなければならない。政府は、2015年の春季国会に必要な法案を提出する予定だ。

 国内的には、先の衆議院選挙で勝利したにも関わらず、安倍首相の政治力は幾分不確かだ、とディプロマット誌はみている。安倍首相の防衛に関する動きは、特に、集団的自衛権行使を禁じるとされてきた憲法の再解釈は、国内で少なからぬ批判を浴びた。

 国会に法案が提出されれば、政治の最重要議題となるだろうし、ガイドライン見直しの作業にも影響を与えるだろう。国会での審議状況によっては、見直しがさらに遅れる可能性もある、とディプロマット誌は報じている。

 10月の報告では、「日米の全ての行動は、その国の憲法、法律、有効な法規、国の防衛方針の基本的立場に沿うものとする」としている。

Text by NewSphere 編集部