圧勝安倍政権、“移民・TPPなど改革に専念を”海外紙求める 改憲より優先すべきとも

 14日の衆院選で、与党の自民、公明両党は、定数の3分の2を上回る議席数を獲得し大勝した。これを受け、海外メディアが安倍政権に厳しい注文を付けている。

◆民意は安倍信任ではない
 各紙とも、国民は表向き与党を選んだ形とはなったが、これを安倍首相への信任と捉えてはいけないと釘をさしている。

 フィナンシャル・タイムズ誌(FT)は、「多くの日本人はアベノミクスの恩恵を感じていない」としつつも、今回の選挙で、有権者が首相に改革推進を続けされる忍耐があったことは、歓迎すべきことだと述べる。これを踏まえて、首相は改革を実現し、持続可能な成長を日本に取り戻さねばならないと、同誌は強調する。

 ガーディアン紙は、今回の選挙は一言でいえば「不思議」だと述べ、アベノミクスへの信頼を喪失し、安全保障政策への疑問があるにも関わらず、他に明らかな選択肢がないゆえに、与党勝利となってしまったと説明する。

 ブルームバーグも、他の選択肢がない中、安倍首相が経済を復活させてくれると信じたくて、有権者は自民に戻ってきたのだと指摘。今回の選挙が、改憲などのより議論を呼ぶ事柄への信任だと首相が勘違いする可能性もあると述べ、改革に新しい息吹をもたらすため、外に目を向けるべきではないと諭している。

◆アベノミクス継続を支持
 FTとブルームバーグは、今後の安倍政権は、改革推進に専念すべきとする。

 日銀の大規模量的緩和のおかげで、首相はデフレ脱却に希望のもてるスタートを切ったが、消費増税という「未熟な試み」で失速し、不景気を招いたとFTは指摘。先送りした10%への消費増税が行われる2017年までに、首相はインフレをしっかりと2%近くで固定し、賃金、物価、消費、投資の増加という好循環を確立せねばならないと助言する。また、人手不足、円安、原油価格の下落という「日本株式会社にとり数年間で最良の追い風」を受けているのだから、この幸運はアベノミクス成功のためにも、賃上げの形で、追い詰められた消費者と分け合わなくてはならないとも述べる。

 ブルームバーグも、構造改革で競争力を高めるという第3の矢の方向性は正しいが、十分に進んでいないと述べ、安倍首相にはさらなるビッグバンが必要だと指摘。そのスタート地点となるのはTPPで、これにより、日本の最も非効率的な分野のいくつかが開かれることになると述べる。また、現状刷新をもたらす移民という新しい血を受け入れること、中国との関係を改善し、その巨大な市場を獲得するチャンスをつかむことも推奨している。

◆リベラル紙が物申す
 一方リベラルなガーディアン紙の社説は、アベノミクスはこれまでのところ「短命な効果を経済にもたらしただけ」と一蹴。また、日本の政治は、ほぼ永遠の官僚と抱き合わせの自民党支配で、アメリカの言いなりと、辛辣に批判している。

 同紙は、5年前に民主党が政権を取ったのは、出直しのチャンスだったと指摘。しかし、沖縄の米軍基地移転問題などの失策が続き、鳩山首相が辞任。後継者も無能と証明され、幻想から醒めた有権者は、安倍首相の経済再生と愛国的美辞麗句の約束に、2012年の地滑り的勝利を与えることで応えた、と述べる。

「それから日本はおなじみの生殺し状態に戻ったので、国民の支持は中途半端、希望も不確か、そして恐怖は明白である」と最後は皮肉で締めくくられており、今回の選挙結果には、いたくご立腹のようだ。

Text by NewSphere 編集部