APECでの首脳会談の可能性は? 韓国は“不可能”、中国は“譲歩次第”…海外識者予測

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)が11月10、11日に北京で開かれる。日本政府は尖閣問題などの解決の糸口として、APECの場を借りた安倍首相と習近平国家主席の首脳会談の開催を求めている。会期が近づく中、海外メディアも首脳会談の実現の可能性や今後の展開を予想し、日本とロシア、韓国との二国間関係についても触れている。

◆「尖閣に領有権問題はない」という主張は取り下げるべき
 ディプロマット誌は、APEC期間中の日中首脳会談について、「日本は中国側の同意を取り付けるためにあらゆる努力をしているが、現時点では安倍首相が習主席に会えるかどうかは分からない」としている。29日には福田康夫元首相が北京で習主席と7月に続く2度目の会談を行ったが、11月の首脳会談の可能性については福田元首相、中国側共に含みを持たせるにとどまった。

 日中両国に豊富な滞在経験を持つエコノミスト、スティーブン・ハーナ―氏は、フォーブス誌に日中首脳会談をテーマにしたコラムを寄稿した。同氏は、尖閣諸島海域への中国船の侵入回数、頻度、滞在時間がいずれも今年に入って減少しているという日経新聞のコラムを引用し、中国は日中関係改善に向け「最初のステップを踏んだようだ」と記す。

 そして、日本側も軟化しつつある中国の動きにある程度までは合わせるべきだと主張。「最低限、『尖閣に領有権問題はない』という極めて不合理な主張は取り下げるべきだ」と論じる。また、こうした日本のスタンスを変えられるのはアメリカの圧力だけであり、11月の首脳会談もそれしだいだとハーナ―氏は言う。しかし、オバマ大統領や国防総省は「安倍首相の背中を押して尖閣問題を解決に向かわせることは難しいと考えている」としている。

◆世界経済全体のためにも日中関係改善を
 経済専門サイト『エコノミーウォッチ』も、「今年のAPECの注目は、中国と日本のリーダーが関係改善の一歩を踏み出すために握手をするかどうかだ」と記す。首脳会談で交わされるべき話題は、歴史認識・靖国参拝問題と尖閣問題だというのはほとんどのメディアの共通した見方だ。『エコノミーウォッチ』は、それに加えてアジア経済の再構築のためにも良好な日中関係は必須条件だと主張する。

 同誌は、1980年代と90年代をアジア経済の黄金期と定義する。その中心には日本がいたが、中国経済の急成長やインドの台頭、韓国ブランドが力をつけたこの20年間で情勢は大きく変化したと記す。そして、「1980年代以降で、日本ほど地政学的・経済的な地位が変化した国はないだろう」としている。

 こうした情勢を踏まえ、アジア太平洋地域の国々はいずれも経済・外交政策を根本的に見直す必要があるというのが、『エコノミーウォッチ』の主張だ。そして、「その中心軸の一つに、ダイナミックな日中関係がある」とし、世界経済全体のためにも、APECでの日中関係改善の動きに大きな期待を寄せている。

◆朴大統領「日韓が首脳会談を開けば関係はかえって悪化」
 ディプロマット誌は、日本が中国の他にAPECの場で首脳会談を求めているロシア、韓国との関係についても言及している。

 安倍首相とプーチン大統領の首脳会談は既にほぼ確定している。しかし、会談のテーマについては「何か重要な議題があるのか、よく分からない」と同誌はやや皮肉を込める。その上で、サハリンと北海道を結ぶ液化天然ガス(LNG)のパイプライン建設と、それに関連してウクライナ危機に対する米欧の対ロ制裁への対応が議題に上ると予想している。

 一方、朴槿恵(パク・クネ)大統領との首脳会談については、開催そのものの可能性を否定している。同誌は、先日、額賀福志郎・日韓議連代表が、首脳会談を求める安倍首相の親書を朴大統領に手渡したエピソードを紹介。それによれば、朴大統領は「我々(日韓)が過去に首脳会談を開いた後には、いつもかえって関係が悪化した」「日本は韓国が満足する形で慰安婦問題に取り組まなければならない」などと返答したという。

 安倍首相、朴大統領ともにお互いの主張を崩していないため、会談はありえないというのがディプロマット誌の結論だ。

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Text by NewSphere 編集部