“金になる太陽光に群がった素人事業者”…海外誌批判 再エネ買い取り拒否問題

 2012年に、再生可能エネルギーで作られた電力を、一定の価格で買い取ることを電力会社に義務付けた固定価格買い取り制度(FIT)が始まった。しかし、一部の電力会社が、太陽光発電事業者からの新規の送電網接続を拒否すると発表。制度の問題点が浮き彫りとなった。

◆急速な拡大
 FITは、太陽光とその他の再エネを奨励するため、ドイツの政策を模して導入された。太陽光に関しては、買取価格が世界で最も高い水準に設定されたため、約2年間の間に、日本は世界2位の太陽光市場となった。昨年日本国内で設置された太陽光の発電規模は、ほぼ7.1ギガワット(1ギガワットは原子炉1機分に相当)で、スペインにある既存の太陽光発電の規模を上回るほどだった(ブルームバーグ)。

 ところが、10月初めに、九州、沖縄、四国、東北、北海道電力が、大規模太陽光電力事業者からの新規の送電網接続の申請を保留すると発表。天気の良い日には大量に発電し、暗くなると突然ゼロになるという太陽光施設の不安定さを理由に、送電網がリスクにさらされるのを防ぐためと述べた(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)

 小渕経産相は、解決策を探るため、審議会を招集すると発表。政府は2030年までに再エネからの電力を全体の20%に、という目標を今でも掲げていると付け加えた。(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。

◆再エネ普及への障害
 再エネに関する月刊誌の「Recharge」によれば、ソフトバンクの孫正義氏によって創設された自然エネルギー財団(JREF)は、再エネ推進の最大の障害は、電力会社の送電網接続の拒否だと指摘している。

 九州電力は、7月の終わりには、送電網接続への申請は、12.6ギガワットに達し、その日中における最小需要8ギガワットを上回ったとして、接続の停止を正当化した。しかしJREFは、「実際に接続されているのは3ギガワットそこそこ」であり、そのような状況で突然申請受理を保留するのは、「普通のビジネス感覚では不当であり、再エネビジネスに大きな混乱を招く」と批判している(Recharge)。

◆事業者にも問題
 ブルームバーグによれば、イギリスでは1キロワットあたり約18円ほどの太陽光の買取価格は、日本では消費税抜きで現在32円。日本の太陽光への投資は、2013年は296億ドルで、2010年の3倍以上であるという。

 FITの高い買取価格が魅力で、多くの事業者が参入したことが、問題の一因になっていると指摘する専門家は多い。FITの認可を受けても、プロジェクトを進めない事業者も多く、経産省は4月から認可取得後6か月までに、土地と設備の確保を行うように義務付けたとブルームバーグは報じている。

 「Recharge」は、金になる太陽光に、実行可能なプロジェクトを行う知識や資本を持たないにもかかわらず、幅広い分野から事業者が参入したと指摘。ある匿名の業界ウォッチャーのコメントとして、このような無責任な事業者を排除するため、電力会社は今回の接続拒否という措置に出たのでは、という説も紹介している。

2030年 世界はこう変わる アメリカ情報機関が分析した「17年後の未来」 [amazon]

Text by NewSphere 編集部