韓国紙“日本の狙いは「戦争のできる国」”と批判 日米ガイドライン中間報告受け

 日米両政府が見直しを進めている「日米防衛協力のためのガイドライン」の中間報告が8日、発表された。今後さらに内容を詰め、今年中に最終報告を行う予定。1997年以来となる今回の改訂で、日米同盟の強化と日本が果たす役割の拡大が図られる見込みだ。中国・韓国のメディアは早速、これに警戒感を示す論説を掲載している。

【日米の思惑が合致】
 中間報告によれば、新たなガイドラインの主要目的は、(1)平素から行う協力(2)日本に対する武力攻撃に際しての対処行動(3)日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合の協力―について、日米両国の役割や協力体制の枠組みと方向性を示すことだとしている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は中間報告を読み取り、新しいガイドラインの下で「ミサイル防衛、監視活動、海洋上の安全保障の分野で日米の協力関係が拡大・強化される」としている。米軍紙「スターズ・アンド・ストライプス(星条旗新聞)」は、現行のガイドラインが「日本周辺地域の情勢」への対処を主眼に置いているのに対し、新しいガイドラインは「世界規模の視点に立った日米同盟のあり方を反映する」ことを目指していると解説している。

 WSJは、日本側の集団的自衛権の行使容認や自衛隊の活動範囲の拡大を目指す動きによって、こうした改訂が可能になったと記す。アメリカにとっては、アジア情勢の変化に対応して「アジア太平洋地域のバランスを取り直す」のが狙いであり(WSJ)、日本をはじめとする同盟国に果たすべき役割の拡大を促すことは、オバマ政権が進める新たなアジア戦略にも合致するという(ディプロマット誌)。

【中国外務省「日米同盟が第三国の利益を損ねてはならない」】
 「スターズ・アンド・ストライプス」は、「ガイドライン見直しの主な理由は、中国の軍事力の急速な近代化と、その国際紛争への積極的な関与へ対処するためだ」とする専門家の見方を紹介している。

 この発言を寄せた大阪大学の坂本一哉教授(国際政治)は、新ガイドラインは、日米同盟において集団的自衛権の行使など日本の役割を拡大し、アメリカの「対等なパートナー」になることを認めるもので、「日本が中国の軍事力に備えるには、このような形でアメリカとの協力関係を強化するほかない」と述べている。

 中国外務省は中間報告を受けて、「日米同盟は(日米の戦争の結果という)特異な歴史的状況下で作り上げられたものだ。二国間に限られた領域を逸脱し、第三国の利益を損ねてはならない」というコメントを発表した。これを報じた中国国営新華社通信は、一連の動きは日本が訴えてきた平和主義をないがしろにするもので、「地域の安全保障に問題をもたらす」と批判している。

【韓国メディアは米中との狭間で複雑な思いも】
 日米同盟における日本の役割の拡大は、韓国の非難も呼ぶというのが日米両国政府とメディアの共通した見方だ。実際、アメリカは今回の中間報告に先立ち、アジア太平洋地域担当のラッセル国務次官補とシェアー国防次官補を筆頭とする政府関係者をソウルに派遣し、韓国政府に新ガイドラインへの理解を求めている。

 朝鮮日報は、新ガイドラインには日本の集団的自衛権行使容認の閣議決定が明確に反映されるとしたうえで、安倍政権の狙いを「日本を『戦争のできる国』に変えることに他ならない」と批判。その一方で、「韓国は安全保障を韓米同盟に、経済を中国市場に依存する戦略を進めている」とし、日米同盟強化との絡みでこの“ねじれ現象”が顕在化し、「韓国の国家戦略が大きな試練に直面する可能性もある」と懸念している。

 また、同紙の別の社説は、集団的自衛権自体は「国連憲章が全ての国に保証している」としながら、朝鮮半島有事の際に「自衛隊が韓国の主権が及ぶ韓半島で作戦を行うためには、韓国の同意が必要だ」と釘を刺している。

日米新ガイドラインと周辺事態法―いま「平和」の構築への選択を問い直す [amazon]

Text by NewSphere 編集部