豪州の次世代潜水艦、日本で建造か 豪政府推進も、野党、軍関係者の反対根強く

 オーストラリアがコリンズ級潜水艦にかわり、日本のそうりゅう型を導入する協議について、以前から様々に報道されてきた。先週、豪首相官邸の代表で、豪国防省の上級幹部が日本を訪問したとオーストラリアの通信社AAP、英デイリー・テレグラフ紙が報道した。

 AAPは、豪上院議員の「日豪の契約はほぼまとまりそうな気配だ」との発言を見出しに報じている。豪政府は潜水艦建造という200億ドルのプロジェクトを一般競争入札で進める気はなく、そうりゅう型導入を推進している。一方、次世代潜水艦を日本で建造することに関しては、安全保障・雇用の両面から根強い反対意見がある。

【安全保障上のリスク】
 安全保障の観点から、元海軍少尉ピーター・ブリッグズ氏が述べた「そうりゅう型はスピードがゆっくりで、コリンズ級ほどの距離を進むことはできないなど、潜水艦としての能力には疑問がある」との反対意見を、AAPは紹介。また、ニック・クセノフォン上院議員の「日本は潜水艦の輸出経験がなく、合弁事業に参加した経験もない。国際的にも物笑いの種になるだけだ」との厳しい批判を掲載している。

 デイリー・テレグラフでも、オーストラリア潜水艦協会フランク・オーウェン氏の「他国での潜水艦建造は重要な技術的情報の共有という点ではリスクがある。オーストラリアが主導権を握るべきだ」等、安全保障上のリスクに関する反対意見を掲載している。さらに同紙は単なる合弁事業ではなく、潜水艦に関する知識・専門家のみを移動させ、予算・労働力はオーストラリアのものを使い、安全保障上のリスクを回避すべきとの国会議員・専門家等の意見も紹介している。

【雇用対策にマイナスとの反対意見】
 雇用面でも反対意見は根強い。豪労働党は、「南オーストラリアの労働者から数十億ドルの仕事を奪うことになる。政府は選挙前の公約(12隻の潜水艦をアデレードで建造する)を守るべきだ」と主張している(デイリー・テレグラフ)。

【豪政府の見解】
 オーストラリア側の潜水艦購入の責任者ウォーレン・キング氏は「日本のそうりゅう型は、オーストラリアの新しい潜水艦のベースとなるだけの能力を備えた、有能なものだ。日本とオーストラリアの合弁事業の可能性を探っている。もう目の前まで来ている」と反対意見には真っ向から反論する(デイリー・テレグラフ)。

 豪アボット首相も「最終契約に至るにはまだ段階が必要だが、オーストラリアでのこのプロジェクトの中心は南オーストラリアになる。潜水艦の合弁事業は南オーストラリアの雇用を生み出す」と強気の姿勢を崩さない(スカイ・ニュース)。

 来年には結論が出る見込みだが、あとしばらくは目を離せない状況が続きそうである。

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Text by NewSphere 編集部