“日本と運命を共にするというサイン” モディ印首相の日本重視姿勢、米紙分析

 安倍晋三首相とインドのナレンドラ・モディ首相は1日、会談を行い両国の防衛と経済の協力関係を強化することに合意した。

 安倍首相は合同記者会見で、日印の関係が、「世界で最も可能性を秘めたもの」と述べ、共同声明では、戦略的・国際的協力関係が、「特別な」ものにまで高まったと表現した。

 安倍首相は、日本がこれからの5年間で、インドに対しインフラ整備への500億円の円借款供与と、官民合わせて3.5兆円の投融資を行うと約束した。

【世界の未来は日印が拓く】
 「しばしば口にしているように、日印関係は、世界のどの関係よりもより多くの可能性を有している」「今回を機に、モディ首相と手に手を取り、可能な限りの全ての分野で結びつきを促進し、これを戦略的にも国際的な協力関係としても特別なものにまで高めたい」(ブルームバーグ)と、安倍首相は、両国関係の重要性を訴えた。

 また両首脳は、個人間の友好関係が育っていることと同様に、アジア最大の民主主義国家がその結びつきを急速に強めていることを強調した(ウォールストリート・ジャーナル紙)。

 モディ首相は、「21世紀の行方はインドと日本がその関係をどう成長させるかにかかっている」「世界の平和、発展、平和のため、インドと日本は大きな責任を負っている」と述べた(ウォールストリート・ジャーナル紙)。

【中国は18世紀の拡張主義者だ】
 共同声明は、防衛分野での協力に重点が置かれたものだった、とウォールストリート・ジャーナル紙は報じている。両国は、定期的な合同軍事演習を約束。日本の防衛および原発技術をインドへ供与するための交渉を加速することで一致した。日本は、救難飛行艇「US-2」をインドに15機販売する予定だ。

 両国の首脳は、名指しこそしなかったが、軍事力を増強し領土問題で威圧的な態度を強めている中国の存在を、脅威と考えていることは明白だ、と同紙は指摘する。モディ首相は、経済界主催の歓迎昼食会で講演し、アジアの平和と繁栄の促進、そして拡張主義者の思考に対抗するため、日本とインドはより緊密な関係を構築する必要がある、とし、「我々の周りの誰もが、18世紀の拡張主義者の価値観を目撃している。領土の侵略、海域への侵入、他国へ押し入り領土をぶんどろうとしている」と述べた。インドも日本と同じく領土問題で中国と対立している。

 モディ首相の日本重視の発言は、インドの首脳がその運命を日本と共にするという明白なサインだ、と同紙は指摘。続けて同紙は、日本はアジア諸国をまとめて中国に対して共同戦線を組もうとしており、モディ首相が姿勢を変えることがなければより広範な地政学的変化が起きうる、との見方を示している。

【日本からの投資を有効に】
 中国は、インドにとって最大の貿易相手国だ。インド商工省によると、インド全体の貿易の9%だという。日本の4倍である。ただ、日本はインドへの直接投資では、4番目の国で、この分野で中国は10位以内に入っていない。

 モディ首相は、「(日本とインドは)経済協力を進め、日本による資金提供の重要性が両国の強い結びつきを示していることを確認した」(ブルームバーグ)と述べ、両国の経済関係強化も強調した。

 印インディアン・エクスプレス紙は、モディ首相が日本関連の事業について、立ち上げまでの期間短縮が期待できる「シングル・ウィンドウ・クリアランス(州政府機関による一連の許認可の申請手続を、一元的に受け付けるサービス)」を適用し、迅速な対応することを約束した、と報じている。

 さらに、「日本との事業に関して、日本側からの提案がうまく回るように、PMO(プロジェクト管理オフィス)のもと特別な管轄チームを設置することを決めた。また、日本から2名を、事業提案の進行を監視するチームに加わってもらうことを提案する。彼らは意思決定の過程すべてに関わることになるだろう」(インディアン・エクスプレス紙)

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Text by NewSphere 編集部