日本、英仏と武器共同開発で合意 中国に対抗? 積極姿勢を海外報道

 小野寺五典防衛大臣とフランスのジャン・イヴ・ルドリアン国防大臣は、日仏の防衛協力と合同軍事演習の規模を拡大する合意文書に署名した。

 また小野寺氏は、フランスがロシアに軍艦を引き渡す計画について、強い懸念を表明した。

【日本は海上防衛、仏はロボット技術】
 日本は特に、海上防衛でフランスと連携を図ることに関心があり、中国の活動を封じ込める重要な鍵になると見ている、とロシアの国有通信社『RIAノーボスチ』は共同通信の報道を伝えている。

 合意は、安倍政権が「武器装備移転三原則」を決めた直後のことだ。安倍晋三首相とフランスのフランソワ・オランド大統領は5月、防衛装備の共同開発について話し合いを始めると取り決めをしたばかりでもある。

 小野寺氏は、「覚書の署名により、両国の防衛協力をより発展させることに合意した」(AFP)と述べた。

 フランスは、ロボット技術を基にした防衛装備の開発や海中の無人の乗り物などに興味を示している、とAFPは小野寺氏の発言を伝えている。また、同盟国アメリカやオーストラリアと既に結んでいる物品役務相互提供協定(ACSA)についても申し出があったとしている。ACSAは、二国間で、食料、燃料、輸送、弾薬、装備などをやり取りすることができるようにするものだ。日仏は今後、締結に向けた交渉に入る見通し。

 日本とフランスの合意は、今月に行われたイギリスとの空対空ミサイルの共同研究合意に続くものだ。

【ロシアは軍艦を極東に配備】
 会談で小野寺氏は、ミストラル級強襲揚陸艦2隻のロシアへの売却計画に強い懸念を示した。同氏はこれまでにも、取引について、「現在の国際情勢に照らせば不得策と言える」と反対の意を明らかにしている(RIAノーボスチ)。

 2隻の軍艦の契約額は12億ユーロとされている。2011年6月、当時の大統領であったニコラ・サルコジ氏の保守政権が決めた。北大西洋条約機構(NATO)諸国としては初めてとなる、ロシアへの大型武器供与だった。

 ルドリアン氏は、支払いは既に済んでおり、契約を不履行にはできないと説明したという。

 フランス製の軍艦は「ウラジオストク」、「セヴァストーポリ」と名前がつけられ、16機のヘリコプター、上陸用舟艇、70台の装甲車両、450人の兵士を運ぶことができるという(RIAノーボスチ)。

 ロシアは、これら軍艦の基地を2015年秋にはロシアの東、ウラジオストクに建設を完了する予定だ。基地には駐屯や、燃料供給のための施設が計画されている、と同メディアは報じている。

 小野寺氏は、「強い懸念という言葉を使ったのは、日本は契約履行を中止して欲しいということだ」と述べた。「世界はウクライナ情勢を非常に憂慮しており、日本はロシアが最近極東に建設を進めている軍施設を不安視している」「もし軍艦がその名の通りの場所に配備されれば、世界中を不安に陥れることになるだろう」(米国営放送『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』)

【西欧諸国はウクライナ情勢でロシアを非難】
 アメリカは先週、再度、フランスに対し、ロシアに軍艦を売り渡す契約への反対を表明している。アメリカ国務省のマリー・ハーフ副報道官は、ウクライナで最近起きている問題から、契約は「全く不適切」と述べた。イギリスのデビッド・キャメロン首相も同じく「考えられないことだ」と非難している(RIAノーボスチ)。

 VOAは記事の冒頭に、動物の血が注がれた簡易プールに2隻の軍艦のプラモデルを浮かべた写真を掲載し、ロシアへの武器供与に強い反対を示している。(写真は5月15日ウクライナの首都キエフのフランス大使館前での抗議を撮影したもの)

 日本は29日、軍艦供与に懸念を表明した。ロシアがウクライナ問題で、国際的な要求に応じなかったとする西側諸国の反発に加わる形だ。

 アメリカとヨーロッパの首脳は28日、ロシアに対し、より広い範囲の制裁を課すことに合意した。EU加盟国は29日、ロシア国営銀行の市場からの排除、将来の武器売り渡し禁止を含むより厳しい方針を決めた。制裁案は31日に正式発表される見通しだ。

 西欧諸国の首脳は、ウクライナの親ロシア派がマレーシア航空機を撃墜したことにほぼ間違いはないだろう、と発言している。298人が犠牲となったこの事件についてロシア側は、ウクライナ政府に非があったと主張している。

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Text by NewSphere 編集部