安倍首相のカリブ外交、現地報道は好意的 雇用・ビジネスチャンスの拡大に期待大

 中南米諸国を歴訪中の安倍首相は28日、2ヶ国目の訪問地トリニダード・トバゴでの日程を終えた。現地メディアはその動向をトップで伝えるなど、日本の首相の初訪問に高い関心を寄せた。

【友好ムードを余す所なく報道】
 現地オンライン紙「トリニダード・エクスプレス・ニュースペーパー」は、安倍首相夫妻が首都ポート・オブ・スペインのピアルコ国際空港に降り立った瞬間からの足取りを詳細に追った。現地紙「ニュースデイ」も、本題の首脳会談の内容に加え、安倍首相が航空警備隊(空軍)の儀仗兵を謁見したことや、パサード=ビセッサー首相とのプレゼント交換などの様子を伝えた。安倍首相は、女性元首のパサード=ビセッサー首相からトリニダード・トバゴの伝統楽器「スティールパン」を贈られると、満面の笑みを浮かべたという。

 トリニダード・トバゴ入りに先立ち、安倍首相は「トリニダード・エクスプレス・ニュースペーパー」の単独インタビューに答えている。その冒頭で、昭恵夫人との新婚旅行でカリブ海を訪れたことを披露し、「個人的に忘れられない土地」と語った。また、日本とカリブ諸国が共に島国の海洋国家であることから、価値観や文化、抱える課題にも共通点が多いと語り、その連帯感に基づいた「友情の絆」を強調した。

 首相は、現地で開催されたCARICOM(カリブ共同体)首脳会談に出席し、参加14ヶ国の首脳とそれぞれ個別に会談した。トリニダード・トバゴのパサード=ビセッサー首相からは、日本人入国者のビザ免除の決定が伝えられた。一方、安倍首相からは相互に大使館を開設すべきという提案があり、パサード=ビセッサー首相からは「早速、外相と協議する」と前向きな返事があったという(ニュースデイ)。

【政治的駆け引きよりもビジネス・雇用関係に関心】
 こうした友好ムード漂う中、「トリニダード・トバゴ・ガーディアン」紙は、武器貿易条約(ATT)の事務局をトリニダード・トバゴに置くことについて、パサード=ビセッサー首相が安倍首相に支持を求めたことを報じた。ATTは、武器・弾薬の国際移転に関する国際基準で、通常兵器や大量破壊兵器がテロなどに利用されることを防ぐことを目的にしている。日本とトリニダード・トバゴは共に昨年批准している。

 一方の安倍首相はCARICOMの各首脳に対し、2016年10月に予定されている国連安保理非常任理事国の投票で、日本へ投じるよう要請したと見られる。ただし、これについてはニュースデイ紙などが簡単に触れているだけで、現地メディアの関心は薄いようだ。

 トリニダード・トバゴ側からの期待が高いのは、日本の協力による雇用・ビジネスチャンスの拡大だ。同紙によれば、パサード=ビセッサー首相は現地企業と三菱商事、三菱ガス化学が合同で代替燃料の一種であるジメチルエーテルのプラントを同国東部の半島に建設していることに触れ、「おかげで雇用が創設された」と安倍首相に謝意を伝えたという。また、パサード=ビセッサー首相は、先日国内にオープンした情報通信企業や研究施設向けのビジネスパーク『タマナ・インテックパーク』への日本企業の進出を安倍首相に熱心に勧めたという。

【首相滞在中に気候変動で支援】
 小さな島国が点在するカリブ諸国にとって、ハリケーンの多発、海面上昇など気候変動による自然災害への備えも重要な課題だ。「トリニダード・エクスプレス・ニュースペーパー」は、安倍首相にこの分野での支援について、直接尋ねている。

 安倍首相は「日本は、環境と災害に対するリスクマネージメントは、CARICOM諸国に対して優先的に支援すべき分野だと考えている」と返答した。そして、『気候変動に対応するための日本−カリブ・パートナーシップ計画』により、具体的な支援を行うことを約束。実際に滞在中の28日、現地で同計画の交換文書の署名式が行われた。日本が15億2,600万円を支出するカリブ8ヶ国を対象にした支援プロジェクトで、国連機関を通じてハリケーンや海面上昇への対策を行う。

 また、安倍首相はCARICOM首脳会談で、災害リスクの低減、環境対策、エネルギー問題、ごみ処理問題などについても、「日本の技術と経験から得た知識を用いてカリブ諸国を支援したい」と述べた(ジャマイカ・オブザーバー紙)。

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Text by NewSphere 編集部