米国、日本のロシア外交に不快感…朝日・韓国紙報道

プーチン大統領

 ロシアへの制裁措置の強化をめぐって、安倍政権は悩みの多い選択を迫られている。アメリカ・オバマ政権は、一貫してロシア・プーチン大統領を強く非難し、各国にも制裁強化を求めている。ロシアとの経済的結び付きが強いヨーロッパ諸国は、当初、厳しい経済制裁には慎重な姿勢を見せていたが、マレーシア航空機撃墜事件以降は、厳しい姿勢を取ることで一致したようだ。これによって、ロシアから投資引き上げが相次ぐなど、はっきりと制裁の効果が見えるようになってきた。

【日本がこれまでに課してきた制裁措置とは?】
 ロシアによるクリミア併合以来、日本は、この国際社会の動きと歩調を合わせることを表明してきた。しかし、その制裁内容は迫力を欠くもので、国際社会から、ためらいがあるのではないかと思われても致し方のないものだった。なお28日には、日本政府は、個人や団体の国内資産の凍結などの追加制裁を発表したが、本稿で扱っている記事は、全てこの発表以前に書かれたものである。

 まず3月、ビザ発給手続きの簡略化に向けた協議を停止したほか、投資、宇宙開発協力、危険な軍事行動の防止に関する協議の開始を見合わせることとなった。そして4月には、ロシア政府関係者23人に対し、ビザ発給を停止する措置を発表した。ただ、その氏名については公表していない。フォーブス誌の寄稿記事は、日本政府がオバマ政権の方針に同調してこれまでに行った制裁措置のうち、この入国禁止措置がせいぜい最大のものだったことを伝える。

【日本政府がロシアへの厳しい制裁をためらう理由とは?】
 日本に、ロシア制裁をためらう理由があるとすれば、その最大のものは、安倍首相が北方領土問題の解決に向けて、ロシア・プーチン大統領との関係を築き上げてきたことだ。もしも、この問題の解決に成功すれば、安倍首相は歴史に名を残すことになる。

 ロシア国営のイタルタス通信は、岸田文雄外相が北海道新聞のインタビューに語った言葉を引用し、日本政府が追加制裁に対して、いかにも慎重な態度である、という印象を強調する記事を掲載している。日本政府はマレーシア機撃墜事件に関して、徹底的な真相究明を待ち、それまで早急な追加制裁は行わない、と岸田外相が述べたとされている。また、日本とロシアは「政治的対話を継続する必要がある」と語ったことが紹介されている。

 安倍首相も同様のことを、撃墜事件後の19日に発言していたことを朝日新聞が伝えている。今年2月の日露首脳会談で、プーチン大統領が今秋に来日する方向で話がまとまったが、その実現への意欲を安倍首相は捨てていなかったのだ。

 しかし、このプーチン大統領の訪日予定を、アメリカ政府が問題視していることを、朝鮮日報は強調する。また、朝日新聞は、米政府高官が「国際社会が結束していないという誤ったメッセージを送る」と懸念を表明したことを報じている。

 現在、日本政府は、訪日の詳細はいまだ未定であり、実現の見通しが不透明になりつつあることを強調するようになっている。

【足並みをそろえない国によって、米企業は大打撃を受ける?】
 アメリカの国内世論は、オバマ大統領の対ロシア政策を支持しているが、ロシアに製品を輸出する米企業にとっては、この政策は大打撃になる、とアイルランド人ジャーナリストのエーモン・フィングルトン氏はフォーブス誌への寄稿で主張している。制裁政策で足並みをそろえない国の企業によって、ロシア市場から米企業がはじき出されるからである。制裁を行わない国はもちろん、制裁に協力すると公言している国であっても、本気度に欠ける場合がある。その筆頭として挙げられているのが、日本だ。

 さらに、日本は、対外的に言うことと、実際に行うことの間にギャップがある国、というふうに名指しされている。表立っては、制裁に対してはっきりと賛意を公言しつつ、その裏では、自国の企業が制裁措置をくぐり抜けるのを、見てみぬふりをする可能性がある、と氏は語る。

 特に日本は、ハイテク機器の輸出にかけて、アメリカの最も手ごわい競争相手だ。IBMやヒューレット・パッカードといった企業が、オバマ大統領の制裁政策のせいで大損をする一方、日立、東芝、NECといった企業が、当局の黙認のもと、思うさま米企業を蹴落とすことになる公算が大だ、と氏は見通しを語る。

【プーチン大統領という明確な敵を発見して勢いづく米政治家】
 アメリカの世論では、プーチン大統領を諸悪の根源と見なす見方が通用しているようだ。それに合わせてか、有力政治家が、自分は以前からプーチン大統領を危険視していたと、改めて主張する例も現れている。

 オバマ政権の外交政策において大きな役割を果たしているバイデン副大統領は、2011年にクレムリンで、当時首相だったプーチン氏と面会した印象を最近語った。ニューヨーカー誌のウェブ記事をジャパンタイムズ紙が引用して伝えている。それによると、バイデン副大統領は、「首相閣下、あなたの目をのぞき込んでみましたが、あなたには心があるとは思えません」とプーチン氏に伝えたという。

 これは、ライバル政党の共和党のジョージ・W・ブッシュ元大統領が、2001年に、「わたしは彼の目を見ました…彼の心を感じることができました」と語ったことを踏まえている。

 オバマ政権で昨年まで国務長官を務めたヒラリー・クリントン氏は、プーチン大統領について、頑固で尊大だが、根本的な自信のなさにひそかに悩んでいる、と評した、とテレグラフ紙が伝えている。そして、プーチン氏が大統領に再び就任した際、今後ますます独断的になるだろうとオバマ大統領に進言した、と語っている。自分は、オバマ政権の中でも、プーチン大統領を最も信用していないグループの一員だった、と断言している。

 今年3月には、ヒラリー氏が、プーチン大統領の行動をヒットラーになぞらえる発言をしている。それに対して、プーチン大統領は6月、「ヒラリー氏は頭が鈍い」「女性とは口論しないほうが良い」などと反論していた。

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Text by NewSphere 編集部