日本、新興国での石炭火力発電普及を支援 オバマの方針に逆らうと米メディア指摘

 23日、経済産業省・資源エネルギー庁は有識者会議を開き、日本の最先端の石炭火力発電設備の新興国への普及に向けて一層注力していく、という検討結果をまとめた。

 これによると、新興国におけるCO2の削減には、先端的な石炭火力発電設備の活用が現実的であり、また、中国、インド、アメリカの石炭発電所を、全て最新の日本製に置き換えれば、理論的には年間15億トンのCO2を削減できるという。

 会議の席上、経済産業省の覺道崇文課長は、「富裕国による公的借款や保証が行われない場合、新興国は安くて非効率的な技術を採用しがちであり、この結果、CO2問題は悪化する」と述べた。

【オバマ政権に対抗?】
 これについて海外各メディアは、地球温暖化(気候変動)問題解決に向けて、新興国向けの石炭火力の輸出を制限するよう先進各国に求めているアメリカのオバマ政権に対抗するものと受け止めている。

 例えば、2013年9月、アメリカと北欧の5カ国(デンマーク、スウェーデン、フィンランド、アイスランド、ノルウェー)は共同声明を発表、今後は国外における石炭火力発電所新設のための公共投資を行わないことを宣言した。

 また昨年12月、アメリカの輸出入銀行は、高炭素集約プロジェクトに関する同行の環境手続きおよびガイドラインの改訂を採択し、オバマ大統領が目標とする炭素汚染の削減と歩調を合わせることを発表した。

 米ニュースサイト『IBTimes』は、4月に安倍首相に対して環境保護団体が合同で送った公開書簡について紹介している。内容としては、「石炭発電を止める国際的な流れに同調せよ。日本には最先端技術があるといっても、所詮石炭ではクリーンな社会の実現は無理」というものだったという。

【日本は世界最大の石炭プロジェクト出資国】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、1970年代の第1次オイルショック以来、日本はエネルギー効率を高めることに熱心に取り組んできた。ここ20年における、日本の石炭火力発電所の平均エネルギー効率は約40%で、インドの25%、アメリカの35%をしのいでいるという(Ecofys調べ)。

 各メディアによると、日本は世界最大の石炭プロジェクト出資国である。天然資源保護協議会(NRDC)が2007年から2013年について調べた数字によれば、日本が197億ドル、次いでアメリカが90.1億ドル、ドイツが60.7億ドルだった。

 先週も日本の国際協力銀行がベトナム電力公社に対し、新型の石炭火力発電所を建設するための資金3億3800万ドル(約340億円)の融資を発表したばかりである。

 記事の最後でウォール紙は、2011年の福島第一原発事故の影響で、現在48基全ての原発が止まっている日本は大きく火力発電に頼っており、年間120億ドル近くの石炭を消費しているという事情に触れている。

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Text by NewSphere 編集部