成長戦略は、ただのスローガン 海外紙は酷評 アベノミクス期待の裏返しか

 政府の産業競争力会議は16日、アベノミクス構造改革の「日本再興戦略」の改訂素案に合意した。27日の閣議で正式決定が予定されている。

 安倍首相は、この計画が「これまで何度も挑戦したが乗り越えられなかった壁」を打破する、と自信を示した。甘利国家戦略・経財相は、「日本経済はここ一年で劇的な変化を経験し、強さを取り戻しつつあります。我々は今が大胆な行動を提案する潮時、かつ最後のチャンスであると認識しています」と決意を表した。

【人口減少下で稼ぐために】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、人口動態的課題に直面しての成長確保を目的とした計画だ、と報じている。内容は、1万人分の学童保育プログラムの確立、働く女性よりも専業主婦に有利な税・年金体制の見直し、「研修生」名目で外国人労働者受け入れを認める産業の拡大、などである。

 また、現在実質約35%の法人税率を数年で20~30%に下げること、特定専門職での残業代免除、上場企業のコーポレートガバナンス強化、国債偏重である年金資金運用基金の投資先見直し、なども含まれている。

【市場はオオカミ少年モード】
 しかし同紙によると、市場の反応は鈍かった。専門家も、従来の構造改革議論と同様に、具体性、実現性に欠けるとの評価だ。

 フィナンシャル・タイムズ紙も、「広い戦略宣言であって具体的な法律ではなく、またいくつかの要素には(農業改革に対する与党内の反対など)論争がある」ことから、「詳細な鉄壁の約束というよりも、慎重にヘッジされた野望という印象」と評している。

【期待の裏返しか、アベノミクス改革への批判】
 フォーリン・アフェアーズ誌(オリエンタル・エコノミスト・アラート誌編集長のリチャード・カッツ氏寄稿)は、「日本は最終的には改革し、復活するだろう」と考えているが、アベノミクスはまるで改革になっていない、と断じる。

 構造改革については、漠然としたスローガン以上のものには進んでいない、と厳しく批判している。

 生産年齢人口が縮小する以上、成長のためには、個々の労働者の生産性を向上させるしかない。しかし、日本はスキルアップも結婚も見込めない非正規労働者を増やして、問題をまったく悪化させていると同氏は説く。

 雇用の流動性や、女性の出産とキャリアの問題について、踏み込みが甘い、との評価だ。

 農業はいまだに独占禁止法の対象外で、農協は非効率的な農家を保護している。しかし大きな票田のため、「安倍は見て見ぬふりをする」と同氏は厳しい。安倍政権の農業改革は単に生産レベル基準の補助金を収入基準に変えただけで、拡大・効率化のインセンティブを与えていない、という。

 発送電分離による電力自由化計画についても、実際は地域の独占事業者が発電も送電も支配する持株会社を作るだけで、福島原発事故の安全記録改竄のような不信は解決していない。その結果、原発は再稼働できず、電力コストは増大し、自動車メーカーなどは海外移転を一層強めている、とのことだ。

 また、消費税は増税するのに法人税は減税することに対し、日本の大企業はすでに投資をせずに現金を溜めこんでいるのであるから、「これが投資を促進などしないのは財務省でさえ認めている」と喝破する。

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Text by NewSphere 編集部