セウォル号沈没事故の時期に、なぜ靖国参拝? 韓国議員が安倍首相と議員団を批判

靖国神社

 22日、146人の超党派の国会議員が、靖国神社の春季例大祭に合わせ、参拝を行った。昨年12月の靖国参拝でアメリカから「失望」された安倍首相は、今回参拝を見送り、真榊を奉納した。

【中韓から批判噴出】
 韓国の中央日報は、今回の参拝を、韓国政府と与野党議員が強く糾弾したと報道。議員で構成された国会「正しい歴史教育のための議員会」の声明は、「セウォル号沈没事故の時期に靖国神社を集団参拝し、供物を奉納した日本指導層の後進性を一つひとつ世界に知らせる」と批判している。与党からは、「侵略戦争を正当化しようとする動き」などの批判もあがっているという。

 一方、中国国営新華社通信は、日本国内からの批判の声を伝えることで靖国参拝を間接的に批判。公明党の山口代表が「好ましくない」と注意したことや、毎日新聞の「戦没者をしのぶのは当然と言う首相のコメントは論点のすり替えだ。追悼の是非ではなく、追悼の場所の問題だ」という意見を掲載した。そのうえで、政治家の靖国参拝は、東京裁判の判決を受け入れず、日本の侵略をごまかす意図があるのでは、という疑問を抱くと述べた。

 また、安倍首相の昨年12月の靖国参拝が、政教分離に違反するとして提訴されていることも紹介。靖国問題が依然として近隣国との摩擦の種になっているのに、なぜ千鳥ヶ淵戦没者墓苑に行かないのかという意見があるとし、日本の政治家の姿勢に疑問を呈している。

【不運なタイミング】
 一方、欧米のメディアは、淡々と出来事を伝えるという論調だ。

 英テレグラフ紙は、「日本の政治家、物議をかもす神社での戦没者慰霊への批判を無視」と題した記事を掲載したが、今回安倍首相は参拝せず、真榊奉納のみを行ったと報じている。

 それでも中国メディアは、首相の贈り物が「挑発的」、「日本にもっとも近い同盟国のリーダーへの平手打ち」とコメントしたと報じ、オバマ大統領来日前というタイミングは不運であったと述べている。

【歴史が及ぼす影響】
 タイム誌も、今回の集団参拝がオバマ大統領来日に影を落とすのでは述べるとともに、地域の緊張、特に日中関係のさらなる冷え込みを懸念している。

 同誌は最近、上海の海事裁判所が、戦後補償を巡る訴訟で商船三井の船舶を差し押さえたことを用いて、歴史問題が現在に及ぼす影響を皮肉を交えて論じている。

「1988年に船の持ち主の子孫によって起こされた訴訟に対する裁判所の決定が、このタイミングに出たのは偶然だったのか?多分そうだろう。しかし、アジアの二つの大国間の関係となれば、歴史は現在に、むりやり押し入るすべを心得ている」

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Text by NewSphere 編集部