六ヶ所村再処理工場、2.2兆費やしてまだ稼働せず “夢”を諦めきれない日本を一部米紙が批判

 原発を「重要なベースロード電源」としたエネルギー基本計画が、11日にも閣議決定する見込みとなっている。福島の事故以降、日本の原発は50基すべてが現在稼働を停止しているが、ここへきて再び原子力を活用する方針が進められていると各海外メディアも報じている。

 特に注目が集まっているのが、青森県六ヶ所村の使用済核燃料再処理工場だ。使用済み燃料からプルトニウムを取り出し、再利用できるように処理する施設である。現在試験運転中だが、今年10月には本格始動が始まる予定であるという。この再処理工場が今、とかく物議をかもしていると海外各紙が伝えている。

【その1 : 国内の反対】
 日本では福島の事故後、原子力に対する恐れが一気に高まった。そのため、最終的には原発を減らしていくという約束にも関わらず、なお原発に頼った政策を進めようとする政府の方針に多くの国民が不安を抱いている、とニューヨーク・タイムズ紙は指摘する。

 そのため国内では、野党はもちろん与党内にさえ反対の声があり、先月末までに決定するはずだったエネルギー基本計画も結局ここまで合意が延びてしまった、とエネルギー資源ニュースサイト『オイルプライス.com』は伝える。さらに民間でも反対活動家が独自のウェブサイトを立ち上げ、抗議活動を行っているという。

【その2 : 近隣国の懸念】
 中国および韓国にとってもこの再処理工場には大いに不安なようだ。『オイルプライス.com』によると、先月オランダのハーグで行われた核安全保障サミットでこの両国は、同施設で再処理された核物質が兵器へと転用される可能性を示唆し、懸念を表したという。現在すべての原発が停止している以上そんなに大量の核燃料が必用なはずはなく、つまりは実際使用する量以上の核物質を保有することとなり、それは国際原子力機関(IAEA)の規則に反する、というのが両国の主張とのことである。

 しかし日本では、いっそそう思わせておいた方が国防のためになるという意見も存在するという。折しも北朝鮮はミサイルのテストを行い、中国との緊張は高まる一方だ。そんな中、日本が「その気になれば武器転用できる」プルトニウムを保管することは近隣国への抑止力になるというのが彼らの主張、とニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。

【その3 : アメリカの警告】
 アメリカは同施設の警備の緩さに警鐘を鳴らしている。大量の核物質が作られるということは、テロの標的になりやすいということだ。しかしここでは従業員の犯罪やテロ関与に関する経歴は特に調査されない、とニューヨーク・タイムズ紙は指摘する。

 さらに日本では民間人が武器を持つことが禁止されているため、つい先日まで丸腰の警備員しかいなかった。やっと最近武装警官が配備されたが、それでも海外の専門家から見ればテロを防ぐにはあまりにも軽過ぎる警備体制、と同紙は伝えている。

【資源独立の夢と引き返せない事情】
 国内外から多くの反対や懸念が寄せられる中、それでも日本が原発へと進む理由は何なのか。『ザ・ワイヤー』は「原子力が日本を資源独立へと導く」というのが安倍首相をはじめとする推進派の主張、と伝えている。

 さらにニューヨーク・タイムズ紙は、資源独立への夢の他に見過ごせないのが原発利権の大きさだと述べる。加えて、すでにあまりにも巨額の資金を原発事業に費やしてしまったので今更やめるわけにはいかないという政府の思惑もあるのでは、と分析している。同紙によると、この六ヶ所村の工場だけでも、220億ドル(約2兆2000億円)の費用がかかっているという。

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Text by NewSphere 編集部