“日本の国会は歴史認識ばかり…” 経済政策への影響を海外メディア懸念

 安倍晋三首相は、日本時間26日未明、訪問先のオランダで、アメリカのオバマ大統領、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領と三者会談を行った。安倍首相と朴大統領の就任以来、初となる首脳会談が実現したことで、海外メディアもこのニュースを大きく取り上げている。

 その中で、一部のメディアは、日韓・日中の関係悪化の背景に「日本の右傾化」があるとみて、関連記事を掲載している。

【「ウルトラナショナリスト」田母神氏の健闘は右傾化の証明?】
 米オンライン誌『IB Times』(IBT)は、「日本の右傾化」を多方面から取材・分析した長文の記事を19日付で掲載。同誌は、先の『アンネの日記』切り裂き事件から想起されるナチズムへのシンパシーや、極端な国粋主義・極右思想は日本では一般的ではないとするものの、「右寄り」の空気は若者を中心に確実に広がりつつある、と論じる。

 同誌は、先の東京都知事選で立候補した元航空幕僚長の田母神俊雄候補を、「ウルトラナショナリズム」の代弁者と紹介する。田母神氏は、61万1000票を獲得し、得票率は12%だった。同誌は、これを日本の右傾化の証明、とする北京大学の学者の意見を掲載した。

 ブルームバーグは、浦和レッズのサポーターがスタジアムに「Japanese Only」という横断幕を掲げた問題など、民間レベルの「右傾化」に言及。「ベストセラーの5位までが中国・韓国の批判本だ」「コリアンタウンの新大久保で反韓的な落書きが増えている」と、いわゆる「嫌韓」感情の拡大についても、「こうした空気は安倍政権が始まってから醸成されたものだ」とする市民運動家の声とともに取り上げている。

 IBTは、「ナショナリズムは、失業者と社会的弱者だけでなく、1980-90年代への回帰を望む(中間)層にも広がっている。こうした『強い日本』を望む声は、政治的にも広く受け入れられている」という、アメリカの研究機関に所属する日本人研究者の分析を紹介した。

【「右傾化」は経済再建を妨げる】
 ブルームバーグは、安倍政権の「右寄り」の動きが、中国・韓国やアメリカを刺激し、その結果として最優先課題であるはずの経済再建がおろそかになりつつあると指摘した。

 香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は、コメンテーターのフランク・チン氏のコラムを掲載。いわゆる「河野談話」を継承したことについては「現実的な対応を見せた」と一定の評価しつつ、「安倍首相自身が、右に動くことは日本のためにならないと気づいていることを望む」と注文をつけている。

 なお日本の国会では、歴史認識問題に関する質疑が今年だけで20回以上も取り上げられている。ブルームバーグは、「国会が第二次大戦のことを論じる”ディベート・クラブ”と化している」と皮肉を込める。

【香港紙「右に動くことは日本のためにならない」】
 こうした国内外のメディアから寄せられる「右傾化」の指摘に対し、安倍首相の弟、岸信夫外務副大臣は、ブルームバーグのインタビューで、ナショナリズムの拡大は「まったくない」と、完全否定した。

 岸副大臣は、ニューヨーク・タイムズ紙の最近の社説が「安倍首相のナショナリズムがアメリカと地域との関係を脅かした」と主張したことに対し、「そのよう指摘は明らかに間違っている」と反論。また、「日本に対するさまざまな批判があることは理解している。そこに誤解があれば、説明を尽くしたい」とも述べた。

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Text by NewSphere 編集部