橋下流「出直し選挙」に大義はあったか? 海外報道は懐疑的だが、都構想には評価の声も

 23日、大阪市長選の投票が行われ、橋下徹氏が再選された。橋下氏は自身の掲げる「大阪都構想」を巡り、2月に大阪市長を辞職。都構想実現のため、市民の後押しが必要とし、出直し市長選に踏み切った。この決断には国内外から厳しい批判の声が出ており、橋下氏のリーダーシップが問われている。

【大義なき市長選】
 橋下氏が掲げる「大阪都構想」とは、大阪府と大阪市の二重行政解消のため、広域行政を担う「都」と特別区に、府と市を統合再編するというものだ。橋下氏は1月に都構想の制度設計を議論する法定協議会で、特別区の区割り案の一本化を求めたが、反対されたため出直し選に打って出た。

 しかし、橋下氏の「日本維新の会」に対立する各党は、「市長選に大義がない」として候補者擁立を見送ったため、橋下氏の「独り相撲」とメディアからの批判も出ていた。

 今回の選挙は、即日開票の結果、投票率は23.59%で過去最低。府知事選とダブル選だった前回の60.92%より、大幅に低下した。

【陰りの見える人気】
 海外メディアは、出直し選という橋下氏の選択に、投票前から懐疑的だった。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、出直し選には6億円の費用が掛かるという大阪市選挙管理委員会の試算を紹介し、この選挙は税金の無駄遣いだと見る人も多いと述べた。

 また上智大学国際教養学部の中野晃一教授(政治学)の、「橋下氏は自分の影響力が衰えることが不満なのだろう。注目を集めるパフォーマンスのようだ」というコメントも紹介し、橋下氏の人気に陰りが見えることを指摘した。

 エコノミスト誌は、「Flaming out(エンジンの燃焼停止)」という記事を掲載(22日付)。橋下氏は、日本維新の会を立ち上げ、地方分権、貿易自由化、参議院廃止を唱えたときは、国政に深く切り込む改革主義者として期待されたと報じた。しかし、2013年5月の「慰安婦は必要だった」発言で、国内外から厳しい批判を浴び、その右翼的思考が破滅を招いたと述べた。橋下氏は当選するが投票率はかなり低くなるだろう、と分析していた。

【都構想自体は評価すべき】
 一方、独立系シンクタンクの学者、スティーブン・ハーナー氏は、フォーブス誌への寄稿で、大前研一氏の「日本の成長と競争力は失速している。なぜなら地方が発展のための構想を考案し実施する意志を失っているからだ。中央の指示に慣れ、それに頼り、結果受け身で創造性はない」という意見を紹介し、橋下氏の「大阪都構想」は健全な案であり、必要だと述べた。

 ハーナー氏は、橋下氏が勝っても市議会と府議会の構成は変わらず、議案の通過は妨げられるとしながらも、「我々はまたすごいドラマや橋下氏と大阪の瀬戸際政策を楽しみにすることができる。個人的には、彼には勝ってもらいたい」とエールを送った。

体制維新――大阪都 (文春新書) [amazon]

Text by NewSphere 編集部