メディアが詳しく教えてくれない5つのニュース

 今週はフランスのマリ武力介入、直後に起きたアルジェリア人質事件について大きく取り上げられた。特にアルジェリアの事件は、人質の国籍が多岐にわたっており、事件の全貌が見えない中で軍が突入、日本人の人質の有無や安否も不明確なため、日本のメディアも詳しく慎重に報道を行なっている。
 その裏であまり詳しく取り扱われなかった重要ニュースをいくつか紹介する。

1.フィリピン外相から、中国の脅威に対抗するための援護要請日本は応えられるのか?
 10日、フィリピンを訪問中の岸田外務大臣は、ロサリオ外相と会談した。かたや南シナ海で、かたや東シナ海で、島々の領有権をめぐり激化する中国の攻勢にさらされる両国は、「アジア太平洋地域の平和と安全を守るため」の連携と協働の強化の必要性について合意。今後の関係強化に向けた取り組みについて話し合ったという。
 中国の台頭に伴い激震する同地域で、今後の日本がどのような役割を担っていくのかに、海外各紙が注目した。

2.甘利大臣発言は急激な円安への警戒か?海外紙が分析
 甘利明経済財政・再生相は、「過度な円安は、輸入費用の増加を引き起こし、国民の生活に悪影響を与える可能性がある」と述べた。この発言の影響で円を買い戻す動きが広がったためか、日本円はドル、ユーロに対して上昇の動きをみせた。15日のニューヨーク外国為替市場では、円が対ドルで5営業日ぶりに反発。対ユーロでも上昇率が過去7ヶ月で最大となった。なお16日の東京株式市場で日経平均株価は反落し、前日比2.56%安の1万600円44銭で取引を終えた。
 海外紙は、円安の動きを政府や投資家や企業がどのように受け止めているのか、そして今後の方針、影響について報じた。

3.過去最悪の大気汚染中国メディアはどう報じたか
 以前から深刻な大気汚染が続く中国では、先週末から汚染数値が過去最悪レベルとなっている。スモッグによって視界が妨げられ、空港や高速道路にまで支障が出ている。さらに、北京の米国大使館の大気汚染モニターによって、有害な影響を与える可能性のある微小粒子状物質(PM2.5)の値が、1立方メートル当たり886マイクログラムとなり、世界保健機関(WHO)が推奨する水準の35倍であることが明らかになった。
 長年にわたって懸念されてきた問題のさらなる悪化を受け、中国メディアは異例とも言える率直な報道で事態の深刻性を訴えている。海外各紙も中国の大気汚染の現状を報じるとともに、変化を見せる報道のあり方に注目している。

4.パキスタン、首相逮捕命令と反政府デモが同時期に起きた理由とは
 パキスタンで、司法や国民が政府に反発する動きを見せはじめている。パキスタン最高裁は15日、アシュラフ首相が汚職事件に関与した疑いがあるとして逮捕命令を出した。同氏が水利・電力相だった時代に電力事業を巡って民間会社から賄賂を受け取った疑いがあるという。同国では最高裁と政権が対立を深めており、昨年もギラニ前首相が汚職事件をめぐる法廷侮辱罪に問われ辞任に追い込まれている。アシュラフ氏は逮捕命令を不当として反発しており、今後の動きに関しては定かではない。さらに首都イスラマバードでは、ザルダリ大統領の退任を求め大規模な反政府デモが繰り広げられている。
 海外各紙は、反政府運動やその背後の軍部の存在に注目した報道をしている。

5.まとまらないヨーロッパだが、経済回復の兆し?
 破綻銀行の直接救済を期待されていた、ユーロ圏の救済基金「欧州安定メカニズム(ESM)」について、所属国のコスト負担を義務付ける欧州委員会の草案が明らかになった。各国政府はESMの救済を求める場合、初めからESMと協調して資金を供出するか、ESMに損失が生じた場合、それを補填する必要があるという内容だと報じられている。救済を求める国の財政に危険が及ぶことを防ぐとするESMの当初の目的は後退しかねない案といえる。
 一方ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ユーロ圏経済の明るい見通しを伝えた。好不況の転換の早期検出を目的とする、経済協力開発機構(OECD)の複合先行指標によれば、ユーロ圏の不況は底を打ち、他の主要経済国の成長も持ち直しつつあるという。2013年、OECD加盟国の合計GDPは2012年から変わらず1.4%成長、2014年には上昇して2.3%成長との見込みであるという。

Text by NewSphere 編集部